FRB議長、トランプ関税で「スタグフレーション」の可能性指摘

2025/04/17 07:32 

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 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は16日の講演で「困難なシナリオに直面する可能性がある」と述べ、トランプ米政権の関税措置が、物価上昇(インフレ)と景気悪化が同時に進行する「スタグフレーション」を引き起こす可能性を指摘した。追加利下げの時期が焦点になっているが、「より明確な状況が判明するまで待つのが適切だ」と述べ、当面は様子を見る考えを示した。

 中西部シカゴのイベントで講演したパウエル氏は「関税引き上げの規模は、当初の予想を大幅に上回っている。経済への影響についても同じで、インフレと成長率鈍化を伴うだろう」と指摘した。

 物価については「関税は少なくとも、一時的なインフレを引き起こす可能性が極めて高い。持続的なものになる可能性もある」と警戒感を強めた。景気低迷による労働市場の悪化にも目配りする考えを強調し、FRBが掲げる「物価の安定」と「雇用の最大化」の二つの目標が、「緊張状態に陥る可能性がある」と指摘した。

 講演後のイベントで、パウエル氏は「経済が低迷しているときはインフレ率が低く、失業率は高いこと状態がほとんどだ。二つの目標は緊張関係にはない」と説明。現時点ではスタグフレーションの懸念が高まり、「中央銀行が何をすべきか難しい地点にいる」と述べ、政策判断が難しくなっているとの認識を示した。

 FRBは昨年12月まで3会合連続で利下げを実施した後、トランプ政権の関税引き上げの影響を見極めるため、政策金利を据え置いている。市場では、次回5月会合も追加利下げは見送るとの見方が多い。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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