現金給付案、なぜ評価されず? 世論調査から見えた国民の本音
政府・与党内は、トランプ米大統領による「相互関税」や物価高への対策として、国民に現金を給付する案を一時検討していたものの、世論の批判を受け、見送る方向だ。毎日新聞の全国世論調査でも現金給付案について尋ねると、「評価する」は20%にとどまり、「評価しない」は57%に上った。国民の収入が増える政策なのに、なぜ評価されなかったのか。理由を探るため世論調査の自由記述を分析すると、長期に続く物価高に苦しむ状況が浮き彫りになった。
◇選挙目的のバラマキ
調査は4月12、13日、スマートフォンを対象とした調査方式「dサーベイ」で実施した。NTTドコモのdポイントクラブ会員を対象としたアンケートサービスを使用し、全国の18歳以上約7000万人から調査対象者を無作為に抽出。2040人から有効回答を得た。現金給付案については「評価する」「評価しない」「わからない」の選択肢から回答を求め、選んだ理由も自由に書いてもらった。
「評価しない」理由で目立ったのは「選挙目的のバラマキ」という指摘だ。今夏には参院選がある。50代女性は「選挙前の賄賂のようなもの」と反発し、70代女性は「参院選前の現金での買収行為」と批判。財源への不安から「選挙の票目当てのバラマキなのは目に見えているし、結局あとから税金で回収されるだけ」(20代男性)との意見もあった。
この他、「事務手数料のムダなお金が発生する」(50代男性)や「貯蓄に回って景気回復にはならない」(70代女性)など、政策のコストや効果を疑問視する書き込みも並んだ。
◇「一時的では……」減税を求める声
ただ、最も多かったのは減税を求める声だ。
「おカネを一時的にばらまくのではなく、消費税等の減税をする方が対策の効果が大きい」(30代男性)▽「現金はありがたいが一時的。消費税を下げた方がよい」(50代性別無回答者)▽「現金給付は、物価高対策には焼け石に水で効果は得られない。消費税減税などの長期的な対策が望ましい」(80歳以上女性)――といった消費税などの減税を求める声が相次いだ。「(税金を)減らして今、貧困で困っている日本国民を安心させてもらいたい」(60代女性)との訴えもあった。
全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は今年3月で43カ月連続の上昇。伸び率も4カ月連続の3%台で、高い水準で推移している。「その場しのぎの一時的な対策」(20代女性)である現金給付では、「ありがたい」よりも「物価高対策として足りない」が本音ということだろう。
◇注文付きの評価
では「評価する」の理由はどうか。
評価する理由でも物価高の生活への影響を訴える声が相次いでいる。「物価が上がるのに給料が上がらない」(20代女性)、「生活を助けてほしい」(40代男性)、「このご時世、1円でもうれしい」(60代女性)などの書き込みが続いた。生活が逼迫(ひっぱく)する中、現金給付は家計への直接的な支援となり得る。
特徴的だったのは「注文付きの評価」が目立ったことだ。「一時的には評価できるが、継続的な対策としては不十分」(30代男性)、「現金給付と減税が必要」(60代男性)、「減税もぜひ検討してほしい」(40代女性)など、「評価しない」の理由同様、現金給付は「ありがたいが、一時的な対策」と捉えている人は多いようだ。
◇財源問題
しかし、現金給付も減税も財源が必要となる。「財源がないとしながら現金を給付するのは理解できない」(30代男性)、「財源は赤字国債しかなく、子どもに借金を残すだけだ」(70代男性)など、財源を懸念する声もある。
明治大学公共政策大学院の田中秀明専任教授は「物価高で最も苦しんでいるのは低所得者世帯だ。低所得者世帯に効果があるのは現金給付だが、一定収入以上の世帯では貯蓄に回ってしまう。一方、減税であれば非課税世帯や高齢者世帯が取り残される。消費減税であれば莫大(ばくだい)な財源が必要となる上、税率を戻すのも難しくなる。都合のよい政策はない。対策は政策の目的と財源を明確にして組み立てるべきであり、その説明ができなければ選挙目的といわれても仕方がないだろう」と話している。【野原大輔】
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