財政審「経済・財政の強じん化を」 トランプ関税や国際情勢踏まえ

2025/05/27 18:01 

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 財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和住友化学相談役)は27日、トランプ米政権による関税強化策に伴う経済構造の変化や国際社会の不安定化を踏まえ、「経済や物価のリスクが高まっており、経済・財政の強じん化の重要性が増している」とする建議(意見書)を取りまとめた。また、金利上昇に伴う国債の利払い費の増加や災害などのリスクについても指摘。市場からの信認を得て安定的に国債を発行するためにも財政余力の確保が急務だとした。

 政府が6月に決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」への反映を目指す。

 財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標を巡っては、現行の2025年度から「25年度から26年度にかけて、可能な限り早期の黒字化を目指すべきだ」と目標年度に幅を持たせた。内閣府が1月に示した試算でPBが25年度に4・5兆円程度の赤字になるとされたことや、米政権による関税強化策で世界経済の見通しが不透明になったことなどを考慮した。

 国・地方の債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率の安定的な引き下げについては従来の目標を踏襲。引き下げのペースは、災害や金融危機が発生しても十分に対応可能な余力を確保できるよう「10年間でマイナス30%程度のペースで引き下げる必要がある」と盛り込んだ。引き下げペースの数字を建議に盛り込んだのは今回が初めて。このペースで達成できれば、債務残高対GDP比の水準は30年度にはコロナ禍前に戻る見込みだ。

 記者会見した増田寛也・財政制度分科会長代理は、新たに債務残高対GDPの引き下げペースの目標を盛り込んだ理由について「PB目標が1年後退したと受け止められては困る。黒字化達成は大事だが、それは通過点で、一定のPBの黒字幅を確保・継続していくことを見据えた」と説明。政府に歳出改革へ取り組み規律ある財政運営を求めた。【加藤結花】

毎日新聞

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