コクヨの「ランドセル生産終了」は市場の陰り? 「ラン活」に変化
ランドセルを選ぶ「ラン活」がまもなく第2の山場を迎える。民間調査によると祖父母による購入が過半を占め、一緒に検討する人が多いのか、長期休みが取りやすい夏はゴールデンウイーク同様にラン活が活発になるという。高額商品が好調で、少子化に反してランドセル市場は拡大を続けてきたが、大手メーカーが生産を取りやめるなど、陰りが見えてきた。
2026年春に入学予定の子供がいる約1600人に5月8~13日、ランドセルメーカーの「セイバン」(兵庫県たつの市)が調査したところ、ランドセルを「購入済み」という人は38・6%。約6割の未購入者のうち73・3%が購入予定を「8月末まで」と答え、夏に決着を迎える人が多いようだ。
「ランドセルを選ぶ際の重視点」を尋ねると、前年から変化が見えた。
24年の調査で重視されたトップ3は「耐久性」「価格」「色」だが、今回の調査ではトップの「耐久性」は変わらないものの、2、3番手に「背負いやすさ」「背負ったときに感じる軽さ」と重さに関わる回答が初めて挙がっている。
セイバンの広報担当者は「タブレット端末など、ランドセルの中に入れるものが重くなってきているため、ランドセル本体の軽さや、背負ったときの体感重量に着目する人が増えている」と話す。
ランドセル本体の重さは素材などによって差が出るが、合皮の製品では1キロ台前半が多いようだ。実際、子供たちが背負うランドセルは、どのくらいの重さなのか。
学校用品を扱うフットマーク(東京都墨田区)が3月、小学1~3年の児童と保護者1200組を調査したところ、ランドセル本体と教科書など中身の重さの合計は平均で3・9キロ。最も重いケースでは10キロを超えた。
専門家は、重いランドセルを背負うことで、肩や腰の痛みを訴えたり、登校を渋ったりする「ランドセル症候群」に陥る危険を指摘する。小学1~3年児童が背負う適切な荷物の重さは「2・5キロ程度」としているが、3キロ以上になった児童は計63%を占めた。
フットマークは軽さを出す布製ランドセルを扱い、最も軽い製品は830グラム。20年からの販売で、21~24年は前年比でそれぞれ約1・5倍に販売数が増加しているという。
ランドセルの「価格」も注目される。
ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員がランドセル市場について調査した報告書によると、小学1年児童の人口は14年の約109万人に対し、24年は約93万人と減少した一方、ランドセルの市場規模は拡大。14年の462億円に対し、24年は552億円と算出した。市場を押し上げたのはランドセルの価格だ。平均価格は14年の約4万2400円から、24年は5万9100円と約4割上昇している。
セイバンの調査でもランドセルは高価格帯に支持が集まり、最多は「6万1~7万円」(25・2%)、次いで「7万1~8万円」(21・5%)だった。「9万1円以上」も5・7%いる。
物価高で家計が苦しい中、高額なランドセルを購入できるのは、祖父母が少子化により数少なくなった孫へ「一生に一度の記念品」として奮発して贈るケースが考えられる。日本鞄(かばん)協会ランドセル工業会(東京都台東区)が25年春に入学した児童のランドセル購入者1500人に実施した調査によると、ランドセル代金を支払ったのは、「祖父母」が計54・4%で、「両親」(41・5%)を抜いている。
ただ、24年のランドセル市場規模(552億円)は、ピークだった22・23年の563億円からやや後退。ニッセイ基礎研究所の久我氏は、少子化による人口減少効果が上回ったとみる。ランドセルの平均価格が直近5年間の上昇率と同程度であれば「市場は緩やかに縮小していくだろう」と分析した。
文具大手のコクヨは3月、ランドセルの生産終了を発表した。理由としてランドセルの環境変化を挙げ「重量化」「価格の高騰」の2点を指摘。「お客様にとってより良い製品・サービスを改めて検討するため、ランドセル事業の見直しを行い、生産終了を決定した」としている。
同社の主力製品は、重さは1キロ台前半、価格帯は5万~6万円と重さ・価格とも一般的で、トレンドである「軽い」「高価格」からやや外れている。市場も先細りとなれば、「見直し」は自然な流れといえそうだ。【嶋田夕子】
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