「ヤオコー」、埼玉から東京23区に進出 強み生かし出店攻勢

2025/12/12 09:32 

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 食品スーパーのヤオコー(埼玉県川越市)が、東京23区への出店攻勢を強めている。これまで都心から20~40キロ離れた郊外一帯の「ドーナツエリア」で展開してきたが、本格的な人口減少社会を迎え、最大消費地で最後の成長市場と目される23区内に照準を合わせる。激しい競争環境下、強みを持つ生鮮や総菜の品ぞろえで勝ち抜く構えだ。【増田博樹】

 23区1号店は6月開業の「杉並桃井店」(杉並区)。11月には2号店「板橋四葉店」(板橋区)がオープンした。

 板橋四葉店の店舗面積は約1463平方メートル。県内などの標準的な店舗の約3分の2と小ぶりだが、店内を歩くと、ヤオコーが特に力を入れる生鮮や総菜のコーナーは遜色ない広さを確保していた。

 焼き肉用黒毛和牛は少量から盛り合わせまで並べ幅広い需要に対応。鮮魚は「地域一番のマグロ屋さん」を目指すといい、鮮度と品ぞろえにこだわった。夜はおつまみ用総菜を提供するなど時間帯ごとに品ぞろえを工夫し、トータルで標準店並の品数を確保する。

 同店1キロ圏内の人口は約4万7000人。複数の鉄道駅に囲まれ利便性が高く人口が増えている地域だ。同店と杉並桃井店(5万5000人)の1キロ圏人口は、武蔵浦和店(5万4000人、さいたま市南区)など一部を除き、最近開業した自社の他店舗を大きく引き離す。

 東京進出の背景にあるのが今後の人口動向だ。国立社会保障・人口問題研究所の2023年の調査によると、今後人口増が見込まれるのは全都道府県で東京都だけ。ヤオコーの川野澄人社長は「人口減が続く中でも都心に近いほど増加している。人口の多いところで少しずつ商売を進めていきたい」と話す。

 自前の店に加え、グループでも東京進出を加速する。10月発足の持ち株会社「ブルーゾーンホールディングス」は同月、東京湾岸部を中心に19店を展開する「文化堂」(東京都品川区)を完全子会社化した。

 経営理念がヤオコーに通じるというのが買収の理由だが、川野社長は「ヤオコーは、足し算は得意だが引き算は苦手で売り場を広くしがち。小規模店でも支持される点を学びたい」と話す。文化堂の店舗面積は300~600平方メートルほどと小さい。土地に限りある東京でいかに売るか。そのノウハウの蓄積も大きな目的だ。

 その東京では、食品スーパー間の厳しい戦いが展開されている。

 既存スーパーに加え、存在感を増しているのがイオン系小型スーパー「まいばすけっと」だ。11月末時点で1都3県で約1300店を展開するが、今後年間200店ペースで出店、30年には今の約2倍の2500店体制を計画するなど、まさに“増殖”中だ。

 西友を買収したトライアルホールディングス(福岡市)も、小型店「トライアルGO」4店舗を都区内に開いた。ディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスも、出店地域は明らかにしていないものの、食品事業を強化した「ドンキ」の店舗開発を表明している。

 ヤオコーは、生鮮・総菜へのこだわりと、各地域のニーズにあった品ぞろえに注力することで、商圏内での高いシェアと業界平均を上回る既存店売上高の伸び率を確保してきた。川野社長は、ライバルの小型店を念頭に「あまりバッティングしないのではないか」と話し、強みを生かした勝負に挑む方針を強調した。

毎日新聞

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