タイ首相が下院を解散、総選挙へ 憲法改正巡り最大野党と対立

2025/12/12 09:44 

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 タイのアヌティン首相は下院議会の解散をワチラロンコン国王に申請し、承認された。12日公表の官報に掲載され、解散後60日以内に総選挙が実施される。アヌティン氏は11日夜、自身の交流サイト(SNS)に「権力を国民に返還する」と投稿していた。

 アヌティン政権は少数与党で、9月に最大野党「国民党」の支持も得て発足した。しかし最近は憲法改正を巡って国民党が与党と対立し、不信任決議案を提出する構えを見せていた。アヌティン氏にとって国民党は頼みの綱だったが、政治的な考え方の違いから解散に追い込まれることになった。

 2023年5月の前回選以降、タイ政治は首相の座を巡り混乱が続いてきた。アヌティン氏は9月、ペートンタン前首相の失職に伴い首相に就任したが、首相指名選で支持を得るために国民党と4カ月以内の解散と、その後の総選挙の実施を約束していた。

 ただ、有権者の関心はそれほど高まっていない。国立開発行政研究院(NIDA)の9月の世論調査では、「首相にふさわしい人物」として27・28%が該当者なしと回答し、国民党のナタポン党首(22・80%)の後に、アヌティン氏(20・44%)が続いた。

 タイでは7日以降、カンボジアとの国境紛争が激化し、タイ軍が空爆を行うなど双方が強硬な姿勢を見せている。アヌティン政権は強気な態度で臨むことで、11月下旬に南部で起きた洪水への対応の遅れに対する批判を挽回しようとしている。支持率を伸ばすために更に強硬になる可能性もあり、解散・総選挙が治安の混乱に拍車をかけそうだ。【バンコク武内彩】

毎日新聞

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