高市政権は「円安是正を」 経団連・日商トップ、賃上げ実感の1年に
経団連の筒井義信会長、日本商工会議所の小林健会頭が毎日新聞などのインタビューに応じた。実質賃金がマイナス圏で推移するなか、「物価高を上回る賃上げ」の実現に向けて、両氏とも円安の是正が必要との認識を示した。
筒井氏は、2026年の日本経済について、企業の好業績と堅調な設備投資が続き「緩やかな成長を維持するのでは」と予想した。
高収益を原資に大企業の賃上げ率は24、25年と平均5%を上回った。しかし物価高に賃金上昇が追いつかず、実質賃金は直近の25年10月まで10カ月連続でマイナスとなっている。
そのため筒井氏は、26年春闘では経団連が先導して高水準の賃上げの勢いを定着させると表明。その象徴として「(基本給を底上げする)ベースアップに力点を置きたい」と語った。また、消費者物価の上昇が現在よりも緩やかになることで「実質賃金は着実にプラスステージに入っていく」との見方を示した。
ただ、障壁となりそうなのが円安だ。25年10月に財政拡張路線の高市早苗政権が発足して以降、財政悪化への懸念などから円相場は下落基調にある。輸出企業の業績には追い風だが、エネルギーや食料品の輸入価格上昇は家計を圧迫する。筒井氏は「適度に円高に修正した方がいい」と述べた。
円安は原材料を輸入に頼る中小企業にも打撃となっている。小林氏は、商工会議所が支援する中小企業にとって「一番の問題はインフレ(物価上昇)で、一番の原因は為替」と言い切る。日銀が12月に政策金利を引き上げたことに対しては、貸出金利の上昇を通じて中小企業にも「影響はもちろんある」としながらも、円安是正につながる利上げの継続を支持した。
筒井氏、小林氏とも、「強い経済」を掲げて成長を志向する高市政権の姿勢には理解を示した。一方で、財政規律や市場の信認を意識した政策も必要だと指摘し、政府会議などの場で発信していくとした。
小林氏は中小企業の賃上げについて、企業は「努力している」と評価し、26年も意欲を示す声があることを明かした。そのうえで賃上げの流れを継続させるため、中小企業がコスト上昇分の価格転嫁を適切に行えるよう「大企業の経営者は当事者意識を持ってほしい」と注文した。また「賃上げを楽しみながら生活はデフレ(物価下落)とはいかない」とも述べ、消費者も値上げに一定の理解を示すよう求めた。【加藤美穂子】
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