器械体操の練習中に頚髄損傷した男性、四肢麻痺となってから20年…“鉄棒の大車輪”再挑戦の夢…

夢への途中経過を披露、鉄棒でパフォーマンスに挑戦するてんてんさん

【写真】車椅子から自力で鉄棒を掴み、体をスイング…てんてんさんが披露した鉄棒パフォーマンス
■“17歳”インターハイ予選4日前に頚髄損傷「自分の体に何が起きたのか理解できなかった」
――麻痺した体でもう一度体操を目指す動画には、「どれだけの努力があったのでしょう、主様の心の強さがわかります」「根っからのスポーツマンですね」「前を向いている貴方の姿は素敵すぎる」などと多くのコメントが寄せられています。このような声を受けていかがでしょうか?
【てんてんさん】正直、ここまでの反響があるとは思ってもみませんでした。僕は決して、最初から前向きに生きてこられた人間ではありません。事故で四肢麻痺になり、現実を受け止められないまま何年も心が止まっていたような時期がありました。実際、もう一度体操と向き合おうと思えるようになるまでには18年という長い時間がかかりました。でも、そういう大きな挫折があって、苦しんで、葛藤してきたからこそ、視聴者さんに受け取ってもらえているものがあるんだと思いますし、僕にとってはいただいたコメントの一つ一つが、ただの励まし以上の意味を持って響いてくる感覚があります。
――頸髄損傷は器械体操の部活中の事故だったとのことですが、どういった事故だったのでしょうか?
【てんてんさん】事故はインターハイ予選も兼ねた大事な大会の4日前のことでした。僕はまだインターハイ本戦に出られるレベルではありませんでしたが、下級生のときは下のクラスで出場していたので、上位クラスの中で戦えるというだけで普段の練習からかなり気合いが入っていました。得意だった平行棒で「後方抱え込み2回宙返り降り」という新しい技を練習していたところ、本来は横方向に飛ばなければならない技だったのですが、飛び出すときの肩の角度がわずかにずれてしまい、体が斜め前方に飛んでしまったんです。その結果、回転力も高さも足りず、頭から落下してしまいました。落ちた瞬間、首から下の感覚が一気になくなり、自分の体に何が起きたのか理解できませんでした。当時16歳の僕は、首を怪我するとどうなるのかなんて考えたこともなかったんです。
――事故後のご心境としてはいかがでしたか。
【てんてんさん】「とにかく大変なことになった」ということだけは直感的に分かりました。救急車で運ばれて病院に着くまでは意外と冷静な部分もあったように記憶しているのですが、病院に着く頃には体中が熱くなって、次第に今まで経験したことのないような激しい痛みが全身を襲いました。感覚はないのに痛みがあるという、不思議で恐ろしい感覚、つねられても、触られてもわからないのに、なぜか痛いんです。突然、自分の体がまったく動かなくなったという現実も到底受け止められず、そこからはもう泣き叫ぶ毎日でした。
――お話を伺っているだけでもとても壮絶な体験だったと想像できます。事故を機に、日常生活においてどういったことに苦労されましたか。
【てんてんさん】現実的なところで言うと、それまでの“自分の感覚”と、“実際の体”とのずれを擦り合わせることですね。たとえば、ちょっと急ぎたいと思っても自分の感覚通りに足がついてこなくて転倒したり、トイレに行きたいとなったときも自分が思っているタイミングより早く出てしまって失敗することもありました。 麻痺が運動機能以外にも内臓機能にも影響しているところもあるのですが、その感覚を掴むまでは苦労したり、情けない思いをすることも多かったです。
■羽が生えたように空を回る“大車輪”は「自由の象徴」、「自由をもう一度手にしたい」
――「もう一度体操をしたい」という思いに至るまでにどんな過程があったのでしょうか?
【てんてんさん】事故をしてからもずっと体操への思いはあったのですが、いくら「体操がしたい」と思っても現実には体が動かない。「体操がしたい」と思えば思うほど苦しくなりました。それでいつの間にか、自分でも気づかないうちに、その思いを心の奥底へと封印していました。そんな中、事故から18年が経ったある日、講演の機会をいただいて自分の過去と改めて向き合うことになりました。そのとき、ずっと閉じ込めていた体操への想いがブワッとあふれてきたんです。「あぁ、そうか。俺は体操がしたかったんだよな」と、過去の自分と対話しているような感覚でした。事故直後はこの身体で体操をするということは考えられませんでした。でも今なら、思うようには動かないこの体とも向き合いながら体操ができるんじゃないかと思えたのが夢を持つきっかけでした。
――昨年からSNS投稿をはじめられていますが、どのようなきっかけからだったのでしょうか?
【てんてんさん】「麻痺した体でもう一度体操をする」というのは、僕の人生の中でも最も大きな決断だったのですが、この挑戦をすると決めたとき、こんなに大きな挑戦をただの自己満足で終わらせてしまうのはもったいないなとふと思ったんです。それが、SNSで発信をしようと思ったきっかけでした。
――SNSで発信するということも含めて、なぜその決断ができたのだと考えますか?
【てんてんさん】当時はまだ自分がどこまで動けるようになるのか全くわからない段階だったのですが、夢に向かう過程には変化が現れたときの喜びも、停滞したときの落ち込みも両方が詰まっているということだけが、1つだけはっきりしていました。だからこそ「できた」「できなかった」という結果だけでなく、そこに至るまでの挑戦の過程も含めて発信することは誰かの勇気や希望に繋がるのではないかと考えました。周囲の人たちもその想いに共感してくれて、SNSでの発信を応援してくれました。
――「鉄棒での大車輪」を目標とされていますね。
【てんてんさん】「なんで大車輪?」ということもたまに聞かれるのですが、大車輪は僕が高校に入って初めて覚えた技だったんです。車椅子で生活を送っている僕にとって、空を回る大車輪という技は羽が生えたような感覚になる「自由」の象徴でもあり、その自由をもう一度手にしたい。そのために、鉄棒での大車輪というのを目標にしています。
■寄り添ってくれる人の存在だけで「救われることがある」、SNSでの発信が誰かの“希望”に
――事故を通して人生観や物の見方にどんな変化がありましたか。
【てんてんさん】「死ぬかもしれない」と言われていたくらいなので、今は半分“ボーナスステージ”みたいな感覚で生きています(笑)。ただ、事故をするまでは“人の心”について考えたことがほとんどなかったのですが、入院中にたくさんの人が自分に寄り添ってくれたことで、「心の支えが生きる力になる」ことを身をもって感じました。
――入院中に何か印象的なエピソードがあったのでしょうか?
【てんてんさん】いえ、何か特別な言葉をかけられたわけでも、生きる術を教えてもらったわけでもありません。ただそこに寄り添ってくれる人がいた、自分の辛さをわかろうとしてくれる人がいた…。それだけで救われることがあると知りました。それから自分自身のことも含めて、人の心について考えるようになった気がしていて、それが僕にとって一番大きな変化だと思います。その分、以前より悩んだり、考え込んだりすることも増えたので、決して「前向きな人生を送ってます!」とは言えないのですが、「前向きになれないときがあってもいいか」と思っているので、それはそれで、ある意味すごく前向きなのかもしれませんね(笑)。
――今後SNSを通してどんなことを発信していきたいですか。
【てんてんさん】SNSを通じて発信していきたいことは大きく2つあります。1つ目は、「事故から20年経っても、ここまで回復できるんだよ」ということ。僕が事故をした2005年当時は、今のようにYouTubeやSNSもまだ普及していませんでした。頸髄損傷という大きな障害を受傷し、「これから自分はどうなるんだろう」という不安と恐怖しかなかったあの頃。もしあのとき、自分と同じ境遇から這い上がっている誰かの姿を見ることができていたら、自分の不安も希望に変えられたかもしれないなと思います。だからこそ、自分の回復の歩みを通して「未来は変えていける」。そう感じてもらえるような発信をしていきたいと思っています。
もう1つは、大車輪という夢に挑戦する姿を通して「夢や目標に向かって行動することの大切さを伝えたい」です。大人になると夢を語るのが恥ずかしくなったり、挑戦する前に「どうせ無理だ」と諦めてしまいがちです。でも、たとえ叶う保証がなくても、夢に向かって進むことは人生に彩りと意味を与えてくれるものだと思います。これは障害があるとかないとかは関係ありません。何かに挑戦することで、日々の見え方が変わったり、自分の価値観が更新されたりする。そんな可能性を、僕の姿を通して少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
-
万博、夏休み中「毎日が花火大会」と発表 8月末までミニ花火、天神祭とコラボも【詳細あり】
大阪・関西万博で夏休み期間中「毎日が花火大会」となることが11日、発表された。7月19日~8月31日の毎日「ミニ花火大会」が行われる。 【写真】パビリオン&…
エンタメ 23分前 ORICON NEWS
-
「吹田の万博」の夏フェス『ジャイガ』、65組が集結 マップ解禁&マイタイムテーブル作成も【出演者一覧】
大阪の夏の野外音楽フェスティバル「ジャイガ」こと『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025』が19、20日の2日間にわたって、大阪…
エンタメ 25分前 ORICON NEWS
-
木村文乃&田中樹主演ゾンビサバイバル『I, KILL』京都から世界へ プチョン国際ファンタスティック映画祭で初快挙
俳優の木村文乃、SixTONESの田中樹が主演し、WOWOWと松竹・松竹京都撮影所がタッグを組んだ初の完全オリジナル大型企画『連続ドラマW I, KILL』(…
エンタメ 26分前 ORICON NEWS
-
さとう珠緒、小沢真珠&山田まりやと“和食ランチ”で女子会「皆変わらないです」「可愛さが奇跡すぎる」「顔小さいなぁ」
タレントのさとう珠緒が10日、自身のインスタグラムを更新。俳優の小沢真珠(48)、山田まりや(45)との3ショット写真を披露した。 【写真】「可愛さが奇跡す…
エンタメ 28分前 ORICON NEWS
-
ゆりやんレトリィバァ、“重大発表”はメジャーデビュー「アリアナ・グランデみたいになりたい」から話が繋がりまさかの展開
お笑い芸人・ゆりやんレトリィバァが、16日にリリースされる1stデジタルシングル「YURIYAN TIME」で、“YURIYAN RETRIEVER”名義でユ…
エンタメ 38分前 ORICON NEWS