フジHDが“買収防衛策”導入へ 旧村上ファンドの買い増し受け対抗

2025/07/10 21:01 

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 フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス」(HD)は10日、旧村上ファンドを率いた村上世彰氏の長女、野村絢氏らが同社株を買い増していることを受け、対応方針を取締役会で決議したと発表した。取締役会が大規模な株の買い付けに反対を決めた場合、臨時株主総会での承認を経て対抗措置を講じる内容。事実上の買収防衛策となる。

 今月1日時点で野村氏らは投資会社「レノ」などを通じフジHD株15・06%を保有している。放送法により、特定株主はフジHDの議決権の3分の1までしか取得できない。フジHDによると、2月から7月にかけ経営陣が村上氏や野村氏らと複数回にわたって面談したところ、上限の33・3%まで株を取得する可能性を示唆したという。

 フジHDを巡っては、別の大株主の米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、不動産事業の切り離しなどを求めて独自の取締役候補を提案し、フジHDの人事案と対立。6月25日の定時株主総会ではフジHDの提案が賛成多数で可決され、サントリーなど大手CMスポンサーが戻り始めている。この間、レノは株の買い増しを続けていた。

 対応方針は、特定株主による議決権比率が20%以上となるような株の買い付けに対し、買い付け趣旨の説明を書簡で求める。書簡を受理後60営業日以内に取締役会で是非を評価したうえで原則、臨時株主総会で賛否を諮り、対抗策を発動する。既存株主に新株予約権を無償で割り当てることで特定株主の保有比率を下げるもので「ポイズンピル(毒薬条項)」と呼ばれる手法だ。

 野村氏側はフジHDの子会社を分離した上で、その経営権取得を検討する方針も示しているという。堅調な不動産事業を担うサンケイビルが念頭にあるとみられ、フジHDは「株主共同の利益ではなく、自身の利益の最大化のための行動に出ることを懸念している」と指摘している。

 ダルトンは株主総会後もフジHDへ関与を続ける方針を示している。フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は対応方針の決定について「今後レノとダルトンが連携する可能性も考えられ、フジHDの危機感は高まっている」と指摘している。【町野幸、植田憲尚】

毎日新聞

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