田代まさし ロングインタビュー2025 【中編】「かっこいいものを全部、取り入れてシャネル…

田代まさし(撮影:鈴木千佳) (C)ORICON NewS inc.

【写真】ドゥーワップや黒人音楽への愛を語る田代まさし
■「いつかは素顔で黒人みたいに歌えるようになろう」ってみんなで話してた
――ドゥーワップとの出会いは、どのようなものだったのでしょうか?
きっかけは映画『アメリカン・グラフィティ』かな。この映画のレコードに入ってた曲は、ほとんど白人が歌ってるものでさ。それを鈴木雅之とかとバンド組んでコピーしてた。そんなときに、東京・方南町にあるソウルバー・Excelloの存在を知ったんだ。で、「行ってみようぜ」って鈴木と一緒に初めて行ったんだよ。
マスターに「僕らバンドやってるんです。ソウルが好きです」ってあいさつしたら、「どんな曲やってんの?」って聞かれて。「(『アメリカン・グラフィティ』のレコードに入ってる)リトル・ダーリン」とかですって言ったら、「それ白人のダイアモンズのバージョンでしょ?原曲はこっちだよ」って、グラジオラスって黒人グループのバージョンをかけてくれたの。それがもう土着的で超かっこよくてさ。「なんだこのかっこよさ…!」って、ビビッときたんだ。
それでそのレコードのレーベルが「Excello Records」って書いてあってさ。「店の名前、ここから来てるのかよ…!」って、さらに興奮してさ。
――衝撃の出会いだった。
そこから鈴木と「俺たちも黒人のスタイルでいこう」って話になったんだよね。日本の音楽って手拍子を1拍目、3拍目の“表”で取るけど、黒人音楽は2拍目、4拍目の“裏”でノる。この違いが大きくてさ。裏ノリの曲は、自然と踊りたくなるんだよ。そういう感覚がどんどんわかってきて、「黒人音楽って最高だな」って思った。
――田代さんはシャネルズで振付を担当していましたが、振付にもそういうノリが役立ちました?
当時はYouTubeなんかないから、ディスコ…っていうか当時は“踊り場”って言ってたけど(笑)、そういうところで踊って覚えたダンスを真似して、シャネルズの振付を作ってた。だから基本的に裏ノリなんだ。たとえば「め組のひと」も裏拍を意識した振付になってるから、当時みんな踊れなかったよ。表で動いちゃうから。
――自然と裏拍を意識していたんですね。
そうなんだよ。当時、「ピンク・ レディーやキャンディーズの振付の先生に頼んでみようか」っていう話が出て。俺がずっと振付してたけど、「一流の先生だから一回やってもらおう」ってことになって。で、やってもらったら…やっぱり日本人らしい表ノリの振付なんだ。それで鈴木と「なんか違くね?」ってなって、俺が普段やってる動きを先生に見せたら「拍子が変だよ!」って(笑)。「いやいや、これが俺たちのリズムなんです」って言ったら、「そのノリは自分には無理だ」って(笑)。で、最終的に「もうお前(田代)がやれよ」ってことになって、全部俺がやることになったりして。
――かっこいいエピソードですね。
黒人のノリが体に染みついてたんだよね。当時は「アフタービート」なんて言葉の意味は知らなかったけど、自然と裏ノリの振付を作ってた。俺にとってはそれが当たり前だったんだけど。
――“顔を黒く塗る”スタイルも、黒人音楽への憧れからですよね。
シャネルズをやるとき、まず見た目から黒人グループっぽくしたかった。でも当時、ドーランなんて知らなかったから、「黒く塗るなら靴墨だろ」って(笑)。それ塗ってテレビ出たりしてた。メイクさんに「何塗ってんの!?」って言われて「これです」って見せたら、「ドーランあるよ!」って教えてくれて。初めてそこでドーランってものを知ったんだ。
――顔に靴墨はつらそうです…。
塗った顔がカピカピになって大変だったよ(笑)。ドーランには濃さのレベルが1~3番まであって、最初はいちばん濃い3番。で、「自分たちもノリが黒人っぽくなってきたな」って思ったら、鈴木と話して1段階ずつ薄くしていって、最終的には1番になったんだよ。いつかは素顔で黒人みたいに歌えるようになろうってみんなで話してた。
――いい話です。
シャネルズって前の4人だけが顔を塗ってたじゃない。あれって意味があってさ。アメリカって昔は黒人グループがどんなに黒人チャートでヒットしても、全米チャートにはなかなか上がれなかった。白人がその曲をカバーすると、そっちが全米で売れちゃうって構造があった。映画『ドリームガールズ』でもそのことが描かれてたよね。
俺たちは、「黒人音楽のほうがかっこいいんだぜ!」ってアピールしたかった。だから、“黒人が白人を率いているような構図”を表現しようと思ったんだよ。それで、あえて前列4人だけが顔を黒く塗った。黒人音楽へのリスペクトの気持ちが強すぎたんだよね。
――そんな意図があったんですね。
当時、それがちゃんと伝わってたかはわかんない。でも俺たちは本気でそういう思いを込めてた。音楽って、音だけじゃなくて、見せ方でもメッセージを届けられるからさ。
――活動するうえで参考にしたグループは?
いっぱいあるよ。コースターズとかね。太めのズボンにコンビ靴、蝶ネクタイとか、衣装はコースターズの影響を受けてたかな。ちょっとラテン系っぽくて、お笑い要素もあってね。コースターズの「Speedo's Back In Town」をカバーしたときは、曲の間奏でハンドル持ってカーブを切る動きを入れたりとか、そういうコミカルな演出もしてた。いろんなグループのかっこいい要素を集めてシャネルズを作ったんだよ。
――本当にドゥーワップが大好きだったんですね。
衣装も、動きも、ノリも、全部好きなものを集めて、シャネルズを作ったんだ。マンハッタンズっていうグループがタキシードに白い手袋をしてたんだ。なんで白手袋なのかって調べたら、振付が綺麗に見えるかららしくて。それも取り入れたりしてさ。シャネルズ時代のことをこんなふうにちゃんと話したの、実はあまりなかったかもしれない。(後編<7日午前10時公開>につづく)
■田代まさし
1956年8月31日、佐賀県唐津市生まれ。高校時代に鈴木雅之らと結成したシャネルズ(のちのラッツ&スター)で歌手デビューし、タレントとしても多方面で活躍する。薬物依存による逮捕・収監を経て、現在は更生と音楽活動に注力している。2025年7月には、再起のきっかけとなった“言葉たち”をつづったエッセイ集『こころの処方箋』を刊行。そのほか、障がいをもつスタッフたちが企画・製造するポン酢「ヒロポン酢」とのコラボレーションや、アパレルブランドとの共同企画なども積極的に展開している。
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