核戦争の影響を検討 国連科学パネル初会合 被爆医師の朝長さん参加

2025/09/06 07:39 

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 核戦争が起きた場合に地球規模で生じるさまざまな影響を評価する国連の科学者パネルの初会合が、米ニューヨークで5日まで2日間にわたり開かれた。日本からは長崎の被爆者で、医師として被爆者医療に携わってきた朝長(ともなが)万左男・長崎大名誉教授(82)が委員として参加した。

 パネルは2024年12月の国連総会決議で設置が決まった。気候、生態系、農業、公衆衛生、社会経済システムなど七つの分野を対象に、核戦争発生の数日後から数十年後まで地域と地球規模で生じうる直接・間接的な影響を検討する。21人の委員は加盟国からの推薦や公募に基づき、グテレス事務総長が任命した。

 およそ3カ月に1度のペースで会合を開き、27年に国連総会へ最終報告書を提出する。国連が核戦争の影響に特化した報告書をまとめるのは約40年ぶり。作業は文献に基づく最新の科学的知見の整理や評価が中心で、蓄積の足りない研究分野の特定も課題となる。

 共同副議長に就任した朝長さんは5日、記者団に対し、核のない世界の実現には「核抑止の概念からの脱却」が不可欠だと強調。その上で「核戦争の結末を21人の科学者が練り上げていけば、核保有国へのプレッシャーになるかもしれない」と語った。

 共同議長に選出されたメキシコ国立自治大の物理学者、アナ・マリア・チェットさんは記者会見で「将来世代のため、市民が危険性やリスクを理解し、意思決定を行えるよう、最善の方法で情報を提供することが重要だ」と述べた。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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