元HKT48矢吹奈子、韓国エンタメの意外な洗礼に驚き「なんて甘い世界なんだ」

2026/09/18 08:40 

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韓国エンタメ界を語る元HKT48矢吹奈子。撮影/草刈雅之 (C)oricon ME inc.

 K-POPや韓流ドラマだけでなく、ウェブトゥーンやアニメなど、さまざまなジャンルで韓国のコンテンツが勢いを増している。今や世界中の人々を魅了する、その強さの秘密はどこにあるのか? かつて日韓合同グループIZ*ONE(アイズワン)のメンバーとして活躍し、Kアニメ『縁(えん)の手紙』(9月25日公開)の日本語吹替版で主人公・ソリの声を演じる元HKT48の矢吹奈子に、韓国エンタメの裏側について話を聞いた。

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■厳しいレッスンを積む韓国、一方で日韓共通の“成長を見守る”姿勢

 2018年から2021年の2年6ヵ月間、日韓合同の女性アイドルグループ・IZ*ONEのメンバーとして活動した元HKT48の矢吹奈子。

 韓国のアイドル界と言えば「レッスンが厳しい」「プロ意識が高い」とのイメージで語られることが多いが、実際に日々のトレーニングや現場の空気感はどんなものだったのだろうか。それについて尋ねると「事務所にもよるし、グループによっても違いはあると思いますけど…」と前置きした上で、回答してくれた。

「HKT48と比べてですけど、やっぱり練習量というか、練習の仕方がすごく違うなと思いました。たとえば“振り入れをしたら終わり”じゃなくて、そこからが練習の始まりみたいな感じで。本当に細かい動きを合わせることが多かったです。例えばしゃがむ高さでも、みんなが同じラインになるように調整するんです。私は小さいのであまりしゃがまなかったけど、身長の高い子はもうちょっと深めにしゃがむとか。そういうことを意識するのは初めてでした」

 48グループでは、一人ひとりが個性を発揮し、ファンに応援してもらうことが重視される一方、韓国では“一体感を見せる”ことがパフォーマンスの重要な要素になっていたという。

「全体で合わせることが一番重要とされているようです。ある曲で、イントロの2秒の振りを10回ぐらい練習した時は本当にびっくりしました。デビュー曲は、メンバー全員で花の形を作らなきゃいけなかったんです。両手で千手観音みたいにして。鏡を見ないで、自分の手の感覚だけでできるようになるまで何回も練習しました」

 こういう話を聞くと“細かいところまで突き詰めて、作品としての完成度を楽しむ”のが韓国で、それに対して“未完成から成長していく過程を楽しむ”のが日本エンタメのように考えてしまいがちだ。ところが「意外と“成長を見守る”という点では、日韓であまり変わらないのかなと思います」と明かす。

「確かに『完成したものを見せる』という韓国のイメージはあると思いますが、その中でも頑張れば頑張るほど歌割りが増えたり、ダンスの見せ場が増えたりすることがあるんです。そこでファンの方が喜んでくれたりすると、頑張って良かったと思えます。ファンの皆さんが一緒に成長を見守ってくれるというのは、意外と日韓共通だなと思いました。

 ファンの人との接し方についても、日韓の差はあまりなかったと思います。日本では“会いに行けるアイドル”でやっていたので、実際対面が多かったんですね。韓国でもサイン会などがたくさんあるので、実際にファンの人と喋ったりコミュニケーションを取ったりする場はどこでも大事なんだなって思いました」

■日本と最も違いを感じたのはバラエティー「なんて甘い世界なんだ(笑)」

 日本と韓国、両方のエンタメを経験した矢吹が、パフォーマンスへのこだわりや、作品作りに対する向き合い方などに違いを感じたことはあったのだろうか。

「韓国ではアイドルの経験しかないんですけど…向き合い方はそんなに変わらないかもしれないです。やっぱりアイドル活動はファンの方に向けてのものだし、ファンの方がいるからこそ頑張れるというのは変わらなかったですね。日本の48グループでは『総選挙』という大きなイベントがあって『ファンの方と一緒に協力して一つでも順位上げられるように頑張ろう』となりましたし、韓国の場合はやっぱりパフォーマンスで見てくださることが多いので『努力して見つけてもらおう』と頑張ったり。とにかくファンの方が主体で、一番先に考えるというのは変わらなかったです」

 韓国での活動を通して、日本と最も違いを感じたのはバラエティーだったと振り返る。

「カメラの台数が嘘みたいにあって(笑)、収録時間も日本の何倍もありました。私たちはメンバーが12人いたので、みんなが出るとカメラが一人1台ずつ12台あって、それ以外にもいろんな場所に自由自在に動くカメラもありました。バラエティーの方が、気が抜けない感じがしましたね。

 それとは全然別の話になりますが…日本のバラエティーだとアイドルも体を張るイメージがあるじゃないですか。変顔をするとか。でも韓国では逆に可愛いことをするんですよ。たとえばゲームで負けたら『ウサギぴょんぴょん』みたいに、あざとく可愛いことをするんですね。この時は『なんて甘い世界なんだ』と。逆に『こんなんでいいんですか? もっと変顔とかしますけど』って思いました(笑)」

■じっくり時間をかけて取り組むからこそ、ずっと変わらない良さがある

 音楽やドラマなど、世界を席巻している韓国エンタメ。その熱量の源について、「時間の掛け方」にあるのではないかと感じたという。

「たとえば歌番組では、出演者全員が朝一でスタジオに入ってリハーサルをして、収録がある人は収録をして、その後何時間も待機して生放送に出るんですね。韓国には“パリパリ文化”(早く早く行動する文化)というものがありますが、収録などは意外と昔ながらのやり方でずっとやられてるんだなと思って。効率は良くないかもしれないけど、こんな風にじっくりと時間をかけて取り組むからこそ、ずっと変わらない良さがあるのかなと思います。日本では経験しなかったので、逆に新鮮でした。

 またメンバーと宿舎で一緒に暮らすというのも新鮮でしたね。IZ ONEは12人だったので、6人と6人で分かれて、そこにマネージャーさんがついて一緒に住んでいました。24時間メンバーと一緒だったからこそ、韓国語を早く習得できたんだと思います」

 そうした韓国エンタメの世界で培った経験やプロ意識が、現在日本での活動に生かされている部分もあるようだ。

「韓国で活動する過程で、怖いものはどんどんなくなっていったかもしれないです。韓国語をちゃんと分からない段階でバラエティーの現場に行っていたので『みんな笑ってるけど、何話してるんだろう?』みたいな時もありました。でも、そんなことがあっても怖くなくなったので、度胸がついたのかなと思います。また韓国は何でも準備時間がしっかりありましたから、私もそれに倣って準備をしっかりしたいと思うようになりました。日本に帰ってアイドルをやっていた時も、韓国の練習の仕方を取り入れてみたり。そういう部分で役に立っているなと思います」

 韓国でのアイドル活動を通して身につけた度胸と、入念に準備する姿勢。そんな経験を持つ矢吹が今回挑戦したのが、LINEマンガで配信中のウェブトゥーンが原作となる韓国アニメ『縁の手紙』での声優だ。

「声だけでお芝居をするというのが初めてだったので、最初はすごく難しかったです。でも、韓国で活動していた経験があったからこそ、韓国語のセリフのニュアンスを理解しながら役に向き合えた部分もありました」

 韓国エンタメの現場で積み重ねてきた経験を、今度は声の演技という新たな表現に生かす。アイドルとして韓国と日本の両方で活動してきた矢吹奈子が、韓国アニメ『縁の手紙』でどんなソリを演じるのか。その初挑戦にも注目したい。

(取材・文/水野幸則)


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