アフリカで感染症対策が逆境 米政権が援助削減 日本の関与に期待

2025/03/14 10:00 

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 トランプ米政権が海外援助の大幅な削減計画を進める中、アフリカをはじめとする途上国の公衆衛生対策が逆境に立たされている。研究開発組織「DNDi(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)」アフリカ地域責任者のサミュエル・カリユキ氏に現状や課題を聞いた。【聞き手・平野光芳】

 DNDi(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ、本部スイス)は、途上国を中心に流行する「顧みられない熱帯病」などで苦しむ人びとのために2003年に設立された、非営利の研究開発組織だ。安全・安価な治療薬・治療法の開発を進めており、日本やアフリカなど8カ所に事務所を持つ。

 DNDiはこれまで、マラリア、リーシュマニア症、アフリカ睡眠病、シャーガス病、C型肝炎、小児のHIV感染症といった六つの主要な病気に対して、13種類の新しい治療法を開発した。

 近年は世界保健機関(WHO)と共に設立したGARDP(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ、本部スイス)が、既存の抗菌薬が効きにくい「新生児敗血症」(主に細菌感染による臓器障害)などに対する新たな治療薬の開発にも取り組んでいる。

 またアフリカ連合・疾病対策センター(アフリカCDC)と協力し、アフリカ域内での医薬品やワクチン生産能力向上も提唱している。新型コロナウイルス禍では、アフリカは医薬品の多くを輸入に頼っていたため入手が遅れ、自給自足の必要性は高まっている。アフリカ産の医薬品の質を担保し、各国が相互に導入できるような許認可体制の確保も必要だ。

 トランプ米政権によるアフリカや途上国への援助削減は非常に衝撃的だった。予告なしの発表で事前に備えることもできなかった。米国の支援でエイズ治療を受けてきた多くの人が治療を継続できなくなる恐れが出ている。アフリカで公衆衛生に関わるスタッフが削減され、直接的な打撃が長期的に続く可能性がある。米国以外の国がこの穴を埋めようと努力を始めているが、即座に対応するのは難しい。

 このような状況の中、日本政府には、医療インフラの整備や人材育成などでのリーダーシップを期待している。貧困層に影響を与える病気に対する医薬品の供給が途絶えないようにするため、日本政府の迅速な支援が必要だ。

 健康な社会を築くことで経済発展を促進し、貧困からの脱却を目指すことができる。健康は最優先課題だ。8月に横浜で開催される「第9回アフリカ開発会議(TICAD9)」でも、アフリカの医療体制整備が重要な議題となることを期待している。

 ◇顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases=NTDs)

 治療や予防の対策が遅れている発展途上国の病気の総称。デング熱、マイセトーマ(菌腫)、ブルーリ潰瘍、河川盲目症、住血吸虫症などがあり、WHOによると世界で10億人以上が影響を受けているとされる。

毎日新聞

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