ウガンダで唯一の日本人料理店 「日本とアフリカつなぐ」夫婦の挑戦
その豊かな自然や温暖な気候から「真珠」とも称されるアフリカの内陸国・ウガンダ。この国に唯一、日本人が営業している日本料理店がある。営んでいるのは京都市出身の男性と、石川県出身の女性の夫妻だ。日本向けの有機農産物の輸出などにも取り組んでおり、二人は「日本とアフリカをつなぐ水先案内人になれたら」と思い描く。
マグロの握り、エビの天ぷら、鶏塩ラーメン、ワカメのみそ汁……。メニューには、日本ではおなじみの料理の数々が英語で記されている。店の近くには米国大使館や国際NGOの事務所があり、店内は欧米人や地元の富裕層らで連日にぎわう。
「地元の人にもすしを食べてもらえるようになった」。首都カンパラで2018年から「YAMASEN(やま仙)」を営む宮下芙美子(ふみこ)さん(36)と、夫で料理長の山口愉史(よしふみ)さん(44)が胸を張る。
夫妻は17年、日本人の仲間たちとウガンダで株式会社「COTS COTS(こつこつ)」を本格的に始めた。やま仙の経営に加え、店が入る複合商業施設の建設・テナント運営や、日本企業へのコンサル業など幅広い業務を手がけている。
そもそもなぜ、日本から遠く離れたウガンダに進出したのか。そのきっかけは、約10年前にさかのぼる。
宮下さんは14年、農作物の流通に携わる会社の駐在員としてウガンダに赴任していた。
現地の日本人と、当時、遠距離で交際していた山口さんの話題になることがあった。山口さんが京都市上京区で和食の店を営んでいることを話すと、相手からこう提案された。「人口が増えているウガンダではこれから外食、特に珍しい和食の需要が高まるはず。ここで店を開くのはどうだろう」
このやりとりを宮下さんから聞かされた山口さんは、「海外で自分の料理人としての腕を試してみたい」と前向きに捉えた。
京都市左京区出身で、5年間営んだ京都の店を15年末にたたんだ。ウガンダに移住し、宮下さんと結婚した。
夫妻は資金調達や建築など各分野に強みのある仲間とともに準備を進め、18年10月に店をオープンした。店名は京都市で山口さんが営んでいた店を引き継ぎ、やま仙と名付けた。
経営が軌道に乗り始めた20年、最大の試練が訪れる。新型コロナウイルスの感染拡大だ。ウガンダ政府は夜間外出の禁止など厳格なロックダウン(都市閉鎖)を実施。さらに国境も閉鎖したため、来店客の多くを占めていた外国人がほとんど国外へ退去した。宮下さんは「経営的にギリギリの状態が続き、貯金を食い潰しながら生き残ることだけを考えた」と振り返る。
そんな状況でも、大切にしたのはウガンダ人との絆だ。やま仙では時短営業を細々と続け、従業員の雇用を何とか維持した。仕入れ先の農家が困窮しないように食材の発注も続け、それを従業員に給与として現物配布した。その結果、「自分たちがどれだけの思いを持って事業に取り組んでいるかが伝わり、ウガンダ人との信頼関係がより厚くなった」と山口さんは語る。
いま、宮下さんは心を強く痛めている出来事がある。24年元日に起きた能登半島地震だ。宮下さんは石川県中能登町(旧鹿島町)出身。家族や自宅に大きな被害はなかったものの、ニュースで見る故郷の変わり果てた姿に言葉を失った。「コロナ禍でさえ会社のためウガンダに残る決断をしたが、今回は日本に戻って何かすべきではないかと自問自答する日々が続いた」と話す。
新年には毎年、母から贈られた加賀・能登伝統の「花嫁のれん」をやま仙の店内に飾る。花嫁のれんは花鳥風月や家紋などあでやかな図柄があしらわれた嫁入り道具だ。婚礼時にしか使わないが、特に昨年からは「少しでも能登にゆかりのあるものを」との思いを込めた。ウガンダから能登の支援団体に寄付をしつつ、他にできることはないかと考えている。
やま仙の2号店を隣国のケニアに出せないか検討したり、日本企業と東アフリカの農産地をつなぐ案件が増えたりと経営は順調だ。「アフリカは日本にとって遠い存在になりがちだが、関わると面白い発想が生まれたりする。私たちがその距離を少しでも縮めるきっかけになれたらうれしい」
そう語る夫妻の異国の地での挑戦は、これからも続く。【郡悠介】
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