ロシア軍、大規模攻撃の兆候 ウクライナ軍は越境攻撃拡大で対抗

2025/03/30 10:55 

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 ウクライナに侵攻するロシア軍は29日、ウクライナ東部ドネツク州など3州で進軍し、一部集落を掌握した。ロシアは米国の仲介で合意した部分的な停戦の履行を引き延ばしつつ、占領の拡大や、ウクライナが越境攻撃で占拠した露西部クルスク州の一部地域の奪還を進め、停戦を巡る交渉を優位に進める思惑があるとみられる。

 露軍には、さらに大規模な攻撃に向けた準備を進めている兆候もある。ウクライナ軍はクルスク州に隣接する露西部ベルゴロド州にも展開し、抵抗している。

 ◇「大規模攻撃の準備」

 インタファクス通信などによると、露軍は29日、東部ドネツク州のほか、北東部スムイ州、南部ザポロジエ州でも進軍し、複数の集落を支配下に加えた。プーチン露大統領は27日、「前線全体で露軍が戦略的な主導権を握っている」と優位をアピールしていた。

 また、AP通信は29日、ウクライナ軍の複数の司令官の証言として、露軍が大規模な攻撃に向け、戦術的に有利となる地域を確保するため攻勢を強めていると報じた。APによると、ウクライナの軍事アナリストは「露軍は今後6~9カ月にわたって続ける攻撃の準備に入っている」と分析した。露軍はウクライナの砲撃陣地や無人機(ドローン)関連施設などへの偵察活動を活発化させているという。

 ◇露西部越境攻撃は拡大

 露西部クルスク州では、露軍を支援する北朝鮮軍部隊の人海戦術などで、露側はウクライナ軍が占拠していた地域の約8割を奪還したとみられる。

 英国防省は28日、クルスク州での北朝鮮部隊の死傷者が3月までに5000人に達し、うち約3分の1は死亡したとの推計を発表した。北朝鮮は昨年12月までに約1万1000人の兵士を派兵したとされるが、韓国軍合同参謀本部は27日、今年1~2月に、3000人が追加派兵されたとの見方を公表している。

 対抗するウクライナ軍は、隣接する露西部ベルゴロド州に攻撃地域を拡大している。ロイター通信は29日、露軍筋の情報として、ベルゴロド州内での両軍の交戦を報じた。ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ウクライナ軍が露軍のクルスク州での攻勢を弱めるため、同州外で「対策を講じている」と述べたが、詳細は明かしていなかった。

 ◇エネ施設、攻撃継続

 一方、ウクライナとロシアが合意したエネルギー施設への攻撃停止は、対象となる施設などの詳細が決まらない中、両軍による攻撃が継続している。

 ウクライナ東部ハリコフでは29日、軍の病院やショッピングセンター、集合住宅などが露軍のドローン攻撃を受け、2人が死亡、25人以上が負傷した。28日にも東部ドニプロで4人が死亡した。

 ゼレンスキー氏は29日のビデオ声明で、「ロシアがウクライナ国民だけでなく、停戦に向けた国際的な外交努力も標的にしていることを理解する必要がある」と訴え、露側を批判した。

 これに対し、露国防省は29日、ベルゴロド州でウクライナ軍の攻撃により送電線が被害を受け、住民9000人への電力供給が停止したと発表。ウクライナ側の合意違反だとして非難した。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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