「ガザがパレスチナ人の集団墓地に」停戦崩壊1カ月、人道危機深刻化

2025/04/17 17:12 

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 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘は18日、停戦交渉が事実上崩壊してから1カ月を迎える。停戦の見通しが立たない中、戦闘や人道危機が拡大しており、「ガザはパレスチナ人の集団墓地になりつつある」との指摘も出ている。

 「我々は自分たちの存続のために戦っている。未来のためだ」。イスラエルのネタニヤフ首相は15日、ガザ北部でイスラエル軍の部隊を視察し、「ハマス壊滅」や「人質解放」といった「戦争の目標」をすべて達成する意思を改めて強調した。

 イスラエル軍は3月18日にガザ全域に大規模な空爆を再開し、北部や南部で地上作戦を拡大してきた。4月12日には南部ラファを分断する「モラグ回廊」を制圧し、ラファを包囲。市内のほぼ全域に避難命令を出した。

 ロイター通信などによると、イスラエル軍は自国との境界沿いや北部などでも「緩衝地帯」を広げている。カッツ国防相は16日の声明で、ガザの制圧地域に軍が恒久的にとどまる可能性を示唆し、ハマスが要求に従わなければ「軍事作戦を拡大させる」と警告した。

 ガザ地区では人道危機が悪化している。国連人道問題調整事務所(OCHA)の15日の発表によると、戦闘再開以降の1カ月で少なくとも1630人が死亡し、4300人以上が負傷した。この間、イスラエル軍はラファでパレスチナ赤新月社の救急隊員15人を殺害したほか、北部の病院も破壊。ハマスの戦闘員や拠点を攻撃したと主張したが、国際社会の非難を呼んだ。

 ガザでは3月上旬から人道支援物資の搬入も止まっている。水や食料などは極度に不足しており、「2023年10月以降で最悪の人道危機に直面している恐れがある」(OCHA)。国際NGO「国境なき医師団」は16日の声明で「我々はリアルタイムで全住民に対する破壊や強制避難を目撃している」と指摘し、ガザが「集団墓地」になりつつあると非難した。

 停戦交渉はカタールやエジプトの仲介で断続的に続いているが、進展の兆しは見えていない。

 英公共放送BBCによると、イスラエル側は6週間の停戦と引き換えに、ハマスが生存している人質の半数を解放し、武装解除に応じるよう要求。これに対し、ハマスは拒否することを決めたという。

 ハマス幹部はロイター通信に対し、「イスラエル軍の撤退や恒久的停戦と引き換えに人質を一斉に解放する用意がある」と述べつつも、武装解除については「検討の余地がない」と語った。ハマスにとってイスラエルの占領に対する「武力抵抗」は存在意義に関わるだけに、すぐに武装解除に応じる可能性はないとみられる。

 地域情勢に詳しいエジプトの専門家、サミール・ガタス氏は「イスラエルはパレスチナ人が土地を離れるよう軍事圧力をかけている。一方、ハマスにはパレスチナ人やハマス自身を守るだけの武力もなく、戦闘を引き延ばしているにすぎない」と分析。トランプ米大統領が初外遊先としてサウジアラビアを訪問する見通しに触れ、「トランプ氏はサウジとイスラエルとの国交正常化を目指しているが、ガザの戦闘が続く中で訪問することはできないだろう。訪問実現のために停戦を目指すのではないか」と指摘した。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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