浮き彫りになった「命の不平等」 アラブ系の街、逃げ場なく

2025/06/17 16:27 

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 イランとの紛争が続くイスラエルで14日、アラブ系住民4人がミサイル攻撃で死亡した。これをきっかけに、民族による「命の不平等」が浮き彫りになっている。

 被害を受けたアラブ系住民の街には、防空壕(ごう)などの避難設備が十分に整備されていなかったという。

 「イスラエルでは、空からもたらされる死は決して平等ではない」。英紙ガーディアンは、紛争下で露呈した社会の分断と不条理をこう伝えた。

 地元メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」などによると、イランが北部の工業都市ハイファを狙って放ったミサイルが、近郊のタムラに落下。

 3階建ての住宅にいた女性4人は空襲警報を受け、各階の防護室に逃げ込んだが、3人は爆風で吹き飛ばされ、1人は崩れた床に押しつぶされた。

 イスラエル国内では、ほとんどの地域にミサイルから身を守る地下壕などが整備されている。しかし、約3万7000人のアラブ系住民が暮らすタムラでは、避難施設の整備が遅れており、住民たちは以前からこの問題を訴えていた。

 アラブ系住民は、1948年のイスラエル建国以降も領内にとどまった人々で、全人口のおよそ2割を占める。

 タムラのムッサ・アブ・ルミ市長はガーディアンの取材に対し、「建国以来、政府はアラブ社会に一つの公共シェルターすら設けてこなかった」と語り、政府の人種差別的政策が防衛面での著しい格差を生んでいると批判した。

 さらに交流サイト(SNS)上では、タムラの悲劇を巡り民族間の分断をあおるような投稿が相次いでいる。米CNNが確認した動画では、ユダヤ系住民がタムラへの攻撃を喜び、「村が燃えますように」と叫ぶ様子が映っていた。

 ある国会議員は、こうした動画について「イスラエル社会に根付いた人種差別の文化と、深まるファシズムの表れだ」と指摘。

 別の議員はX(ツイッター)で「恥ずかしく、嫌気がさす」と非難し、「(アラブ系都市に避難施設が不足していることこそが)より大きな恥だ。この国は人種差別的な政策を進めている」と投稿した。【古川幸奈】

毎日新聞

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