イスラエルが国営イラン放送爆撃、3人死亡 映像のキャスターは無事

2025/06/17 20:44 

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 イスラエル軍は16日夜、イランの首都テヘランで国営イラン放送(IRIB)の本部を攻撃した。IRIBはニュース番組を生放送中で、スタジオで爆発が起きる瞬間の映像がそのまま流れ、その後、放送が中断された。イスラエルが報道機関を公然と攻撃したことで、事態はさらに緊迫の度合いを強めている。

 当時の映像によると、爆発が起きたのは、女性キャスターがカメラに向かって話している最中だった。爆音とともに突然、背景が暗くなり、煙が部屋に充満した。女性はそのまま画面の外へ逃げ、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫ぶスタッフとみられる男性の声も響いた。

 イランメディアなどによると、IRIBの建物は大部分が炎に包まれ、黒煙が立ち上った。少なくとも3人が死亡したが、スタジオから逃げた女性の無事は確認されたという。

 イスラエル軍は攻撃後、「軍事利用されていた」と主張したが、その根拠は示していない。一方、ネタニヤフ首相は「体制のプロパガンダを妨害する」のが目的だったと述べた。国営メディアを標的にすることで、イラン政府の情報発信能力を弱体化させる狙いがあったとみられる。民間施設への攻撃は国際法で禁じられており、国際社会の非難が高まるのは必至だ。

 こうした中、国際原子力機関(IAEA)は17日、高解像度の衛星画像の分析結果として、中部ナタンツの地下にあるウラン濃縮施設にも攻撃の影響が出ていると明らかにした。地上での被害は確認されていたが、地下施設にも一定の被害が出たとみられる。

 イランは16日夜から17日にかけて、イスラエルへミサイル攻撃を繰り返した。イスラエルメディアによると、北部ハイファで3人が死亡したほか、石油精製所が被害を受けて閉鎖された。これまでのイスラエル側の死者は少なくとも24人で、負傷者は600人を超えた。両国は軍事施設にとどまらず、民間施設へも攻撃対象を広げている。

 軍事衝突が激しさを増す一方で、イランが米国に対し、停戦に向けてイスラエルに圧力をかけるよう要請したとの報道もある。また、イランのアラグチ外相も16日、X(ツイッター)に「ネタニヤフを黙らせるには、ワシントンからの1本の電話で足りる」と投稿し、トランプ米大統領に対応を迫った。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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