イスラエル、ガザ住民の強制移住準備 「人道都市」名ばかり

2025/07/08 07:15 

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 イスラエルのカッツ国防相は7日、パレスチナ自治区ガザ地区南部に避難民を収容する区域を設ける準備をするよう軍に指示を出した。イスラエルは「人道都市」と称しているが、実態は強制的な収容施設に近い。ガザ住民を域外に強制移住させる拠点にもなる見込みで、実行されれば国際社会から非難が高まるのは必至だ。

 ◇一度入れば、出られない収容区域

 カッツ氏によると、まずガザ地区南部に避難している約60万人の住民を、身体検査をした上で区域内に収容する。最終的には約200万人のガザ住民全員を移住させる。

 人道支援物資の配布拠点を4カ所設けるが、一度「人道都市」に入ったら、住民は離れることを許されない。イスラム組織ハマスとの間で、60日間の停戦合意がなされるなどの条件が整えば、収容区域の整備を始めるという。

 イスラエル軍は周辺の警備は担うが、運営は外部機関に委ねる方針だという。カッツ氏は具体的な組織名を明らかにしていないが、イスラエルメディアによると、イスラエルと米国が後押しする援助組織「ガザ人道財団」(GHF)が担う可能性が高いという。

 ロイター通信によると、GHFはトランプ米政権に対して「ガザ住民が一時的に暮らし、過激思想を取り除き、希望があれば移住の準備ができる場所」の整備を提案していたという。GHFは5月下旬から支援物資の配布を始めたが、拠点周辺でイスラエル軍の発砲によるガザ住民の死傷者が相次いでいる。

 カッツ氏は、ガザ住民の移住について「実現されるべきだ」と強調しているが、国際法違反の可能性が高い。イスラエルはガザ住民の受け入れを巡って複数の国に打診しているが、受け入れを表明した国はない。【エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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