「焼け石に水」の懸念も 中国が本腰を入れ始めた子育て支援

2025/08/20 06:30 

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 急速な少子化に直面する中国で、政府が育児手当の支給や幼稚園の費用補助を相次いで打ち出した。従来は地方政府が独自に実施していたが、全国統一の施策によって支援水準を底上げし、人口減少に歯止めをかける狙いがあるとみられる。

 中国政府は7月28日、育児手当として、満3歳になるまでの乳幼児に1人あたり毎年3600元(約7万2000円)を支給すると発表した。対象者は2000万人あまり。財源の9割は中央政府が担い、2025年分は国家予算から約900億元(約1兆8000億円)を当てる。

 これまでの地方政府による育児手当は、1人目の子どもを対象外とすることも少なくなかった。国営新華社通信は、専門家の意見として「(今回の手当は)一人っ子も支給対象とすることで、若い夫婦の子育てへの不安を緩和できる」と伝えた。

 さらに、中国政府は8月5日、新学年が始まる9月から公立幼稚園の保育・教育費のうち、最終学年の1年間に限り無償化する施策も発表した。私立に通う場合は公立の費用に準じて減免する。

 当初の対象人数は約1200万人で、財政支出は約200億元(約4000億円)。政府は「就学前教育の段階的無償化」を掲げており、対象年齢は今後拡大される予定だ。

 一連の施策について、国内では、経済的負担の軽減を歓迎する声が上がる一方、「焼け石に水」との冷ややかな意見もある。

 民間シンクタンクの24年の報告書によると、成人するまでの養育費は、中国の全国平均が53万8000元(約1080万円)で1人当たり国内総生産(GDP)の6・3倍に相当。韓国の7・8倍に次ぐ水準であり、世界的に見ても養育費が高い国だとされる。【北京・河津啓介】

毎日新聞

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