国連事務総長「日本のリーダーシップが重要に」 TICADで来日中

2025/08/21 17:16 

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 アフリカ開発会議(TICAD)に出席している国連のグテレス事務総長が21日、横浜市で記者会見を開いた。世界各地で自国の利益を優先し、国際協調を軽視する風潮が広がっていることを念頭に「今まで以上に開発協力のチャンピオンである日本のリーダーシップが重要になっている。グローバルな課題に向き合うには、団結した行動が必要だ」と呼びかけた。

 TICADでの議論の焦点は、平和構築▽公正なグローバルガバナンスと金融▽気候変動対策への投資▽デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現――の4分野だと説明。「平和の構築なくして開発を進めることはできない」と強調し、外交努力による紛争解決の必要性を訴えた。さらに、国連安全保障理事会や国際金融機関の改革にも触れ、過剰な融資でアフリカ諸国が債務超過に陥るのを防ぐには大胆な救済策が不可欠だと指摘した。

 また、世界全体の再生可能エネルギーに関する投資のうち、アフリカが受け取っているのはごく一部にとどまる現状を問題視。資金と技術を投入し「再生可能エネルギーと製造業の基盤を大陸全体に築かなければならない」と述べた。加えて、深刻なデジタル格差を解消し、人工知能(AI)を活用した開発を後押しする必要があるとした。

 一方、グテレス氏はロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区での人道危機における日本の対応を評価。「日本は国連憲章に基づき、国際法を順守しながら解決を図ろうとしている」と述べ、国連安保理が機能不全に陥る中でも開発と対話を続ける姿勢を「平和のメッセンジャーだ」と位置付けた。

 また、被爆80年を迎えた広島や長崎にも言及。過去の訪問で被爆者の証言に深く感銘を受けたと明かし「核兵器のない世界を実現するために闘うことが我々の義務だ」と強調した。【古川幸奈】

毎日新聞

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