英MI6初の女性長官が演説 ロシアの脅威強調、教育の重要性も
英秘密情報部(MI6)で初の女性長官となったブレイズ・メトレウェリ氏が15日、ロンドンのMI6本部で演説した。10月の就任以降、対外的な演説は初めて。「攻撃的で拡張主義的、(歴史)修正主義的な」ロシアの脅威を強調し、プーチン露大統領がウクライナ和平を巡る交渉を引き延ばして「自国民に戦争の代償を負わせている」と批判した。
MI6は対外活動を担う諜報(ちょうほう)機関。映画「007」シリーズにおける主人公ジェームズ・ボンドの所属先としても知られる。メトレウェリ氏は「世界から隠れた場所で工作員を勧誘し、運用しながら、英国と世界を安全にするために秘密を共有している」と任務を説明した。
その上で「世界は今、ここ数十年で最も危険で、対立が激化している」と警告。特にロシアに焦点を当て、「プーチン氏の歴史の歪曲(わいきょく)とゆがんだ承認欲求のために、数十万人が命を落としている」と断じた。
そして、ロシアによるサイバー攻撃や海域での破壊工作、プロパガンダなどに対抗していく決意を表明した。ウクライナへの支援については、「欧州の主権と安全保障だけでなく、世界の安定にとっても根本的に重要だ」として継続を誓った。
メトレウェリ氏は、映画と同様に、実際の組織内でも「Q」と呼ばれるMI6の技術革新部門の責任者などを務めてきた。演説では、人工知能(AI)などの先端技術が「紛争の現実を書き換え、SFのような道具を生み出している」との認識の下、対策の重要性も力説した。
また、「かつて人々を結びつけた情報は、今や武器化されている」と指摘。「虚偽情報は事実より速く拡散し、共同体を分断し、現実をゆがめる」と警鐘を鳴らした。
そうしたリスクには学校教育など社会全体で対処することが必要だと主張し、「情報源を確認し、証拠を吟味し、恐怖などの強い感情を引き起こすアルゴリズムに注意しよう」と呼びかけた。【ロンドン福永方人】
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