地方創生や防災を手厚く 2025年度予算案、垣間見えた石破カラー
石破茂首相就任後初の編成となった2025年度予算案は、経済政策の多くを岸田文雄前政権から引き継ぐなど路線継続が目立った。一方、地方創生や防災分野に予算配分を厚くするなど首相らしさも垣間見える。今後は、少数与党として野党の理解も得ながら政策実現を図れるかが焦点だ。
政府は前政権が打ち出した脱炭素社会を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向け、官民投資を推進する。予算案には次世代太陽電池「ペロブスカイト」の製造設備への投資支援や次世代航空機の技術開発支援に7258億円を計上する。前政権肝いりの先端半導体などの支援も3328億円を充てる。
前政権色の強さゆえ、予算編成過程では政府内から「首相は経済が苦手なのだろう」(内閣府幹部)との見方も出た一方、「岸田路線を進めることが経済にプラスになる。新しい話がないと批判するのは気の毒だ」(財務省幹部)との声もある。
経済政策の新味に乏しい半面、首相は地方創生などに力を注ぐ。
2014年の安倍晋三政権下で初代地方創生担当相に就任した首相。自身は人口最少県の鳥取出身で、衰退する地方の活性化は譲れないテーマだ。首相就任後に自身が本部長を務める新しい地方経済・生活環境創生本部を新設し、24日には今後10年間に実施する施策の「基本的な考え方」をまとめた。交付金など地方創生関連経費は倍増の2033億円を来年度予算案に計上する。
財務省関係者は「小規模自治体も交付金を十分に活用できるよう地域独自の取り組みを計画から実施まで国がサポートする」と説明する。地方からの若者、女性の流出を防ぐため、地域間や男女間の賃金格差の是正などを目指す。
持論である「防災庁」の設置に向け、内閣府防災担当の機能も拡充。人員と予算をぞれぞれ倍増し、146億円を計上した。
能登半島地震・豪雨の教訓からキッチンカー、トレーラーハウスなどを迅速に派遣するための登録制度を創設し、関連予算4000億円を充てる。こうした車両は避難所の環境改善などにつながった半面、所在情報などを事前に把握できていなかったため改善する。政府関係者は「首相は現場主義。対応車両の被災地までの交通費を出すべきだと助言するなど、防災にはものすごく熱心だ」と感心する。経済官庁幹部は「詳しくない経済分野では前政権を踏襲することで失点を防ぎ、得意の防災などの分野で国民の支持を得たいのだろう」と推測する。
24日の臨時国会閉会後の記者会見で「少数与党だが、ハングパーラメント(宙づり国会)の妙味を最大限に生かし、目指すべき日本を確立したい」と述べた首相。独自カラーを含む政策実現のための最大の難局は年明けからの国会審議だ。【山下貴史、古川宗】
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