政策活動費廃止で「カネを握れない幹事長」に? 政治改革Q&A

2025/01/12 08:01 

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自民党派閥裏金事件で失われた政治への信頼をどう回復するかは、2025年の国会でも重要なテーマになります。昨年末の臨時国会で政治改革関連法が成立しましたが、何が変わり、どんな課題が残されているのでしょうか。Q&A形式で解説します。

 ◇二階氏に50億円、野党「ブラックボックス」

 Q ようやく政策活動費(政活費)が廃止されるね。

 A そうですね。昨年12月24日に改正政治資金規正法が成立し、全廃が決まりました。政活費は、政党から党幹部など政治家個人に支出されても、使途を開示する義務はなく、長年「事実上の裏金」と批判されてきました。

 22年の自民党の政治資金収支報告書によると、幹事長や政調会長など党幹部ら15人への支給額は計約14億円。幹事長が大半を管理しているとされ、二階俊博元幹事長は在任中の5年間に約50億円を受け取っていました。

 派閥裏金事件が発覚したことをきっかけに注目され、野党は「ブラックボックス」と批判を強め、全面廃止を求めてきました。

 Q 廃止までに紆余(うよ)曲折があったよね。

 A 裏金事件を受けて、岸田文雄前政権も規正法改正に取り組みましたが、昨年6月の改正では、日本維新の会が主張した政活費に関する領収書の10年後公開を付則に盛り込むにとどまりました。

 ◇衆院選大敗で石破首相「廃止」明言

 同年9月の自民党総裁選では、茂木敏充前幹事長や小泉進次郎前選対委員長らが政活費の廃止を訴えました。総裁選に勝利した石破茂首相は、就任直後は「将来的な廃止も念頭に検討する」との表現にとどめていましたが、10月の衆院選で大敗すると方針を転換。政活費の廃止を明言し、「年内に決着を図りたい」と打ち出しました。

 Q それでも全面廃止には慎重だったよね。

 A 当初の自民党案は外交上の秘密や企業機密、個人のプライバシーなどを害する恐れがある一部の支出を非公表にできる「要配慮支出」を盛り込んでいました。法案提出の直前には「誤解を招く」として名称を「公開方法工夫支出」に変更しました。

 しかし、野党から「新たなブラックボックスを生む」と厳しい批判を受けて撤回。野党が提出した全面廃止法案に賛成しました。政策活動費は26年1月1日から廃止されます。

 ◇「自由なカネ」歴代幹部、求心力向上に利用か

 Q 結局、政活費は何に使われてきたの?

 A 法改正を巡る国会審議でも、使途は明確にはなりませんでした。石破首相は、選挙や政治活動の他に「国会でいろんなご議論を賜るときに、それを円滑にするための費用」などに使用してきたと語りましたが、具体的な使途については「つまびらかに話をすることはいたしかねる」と述べるにとどめました。

 一方、派閥幹部を経験した議員の秘書は「政活費は機密費に相当する『どうにでもなるお金』だった。選挙資金として議員に渡すなど、領収書がいらない自由なカネとして、さまざまな目的で使われてきた」と明かしています。

 また別の秘書は、党幹部は直属の部下となる副幹事長や政調副会長などに年間数百万~数十万円ずつ配るのが慣例だったとも証言しています。党幹部が、使途公開が不要な「自由なカネ」を議員らに分配することで、党内での求心力を高めてきたといえます。

 ◇「官房機密費」握る官房長官が有利に?

 Q これで自民党政治は変わるのかな?

 A 党内からは「カネを握れない幹事長より、官房機密費を使える官房長官が力を持つようになるだろう」との観測が上がっています。

 官房機密費は、正式には内閣官房報償費といって、その額は年間約12億円に上ります。官房長官が管理し、使途の報告義務はありません。詳細は不明ですが、官房長官経験者が、選挙応援の陣中見舞いとして支出したと証言したことがあります。「政治とカネ」に対する国民の不信感を払拭(ふっしょく)するために、政治家には引き続き、透明性を高める努力が求められます。【飼手勇介】

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