米国防長官が初めて硫黄島に トランプ政権下でも「強固な連携」演出

2025/03/29 20:22 

 太平洋戦争末期に日米の両軍による激戦地となった硫黄島(東京都小笠原村)で29日に開かれた日米合同慰霊式には、石破茂首相や中谷元・防衛相に加え、ヘグセス米国防長官が米国の国防長官として初めて出席。戦後80年の節目に日米の強固な同盟関係と和解を改めて内外に示した。

 1月に国防長官に就任したヘグセス氏が中谷氏と会うのはこの日が初めて。両氏は合同慰霊式の後、島内で記念撮影を行った。中谷氏はその後、硫黄島航空基地で記者団に「80年前に戦火を交えた日米両国が、世界で最も強力で、最も成功し、重要な同盟関係となり、地域の平和と安定を守っていることを内外に示すことができた」と語った。防衛省幹部は、両氏がそろって硫黄島を訪問したことについて「トランプ米政権下でも日米の連携が深まっていくことを示すことになる」と意義を強調する。

 日米両政府はこれまでにも、双方の首脳が第二次世界大戦の惨禍を伝える場所を訪れて戦没者を慰霊し、両国間の関係発展に生かしてきた。2016年にはオバマ米大統領と安倍晋三首相(いずれも当時)が広島とハワイ・真珠湾を相互訪問する「献花外交」が実現した。

 今回のヘグセス氏の硫黄島訪問も米側の希望で実現したといい、日本政府関係者は「ヘグセス氏はアジアで初の外遊先を日本にすることにこだわっていた」と話す。

 一方、トランプ政権は26日、米国外で製造された自動車とエンジンなどの主要な自動車部品に25%の関税を課すと発表したばかりで、日本政府には警戒感が広がっている。中谷、ヘグセス両氏は30日に東京で会談するが、トランプ大統領に近いヘグセス氏が在日米軍駐留経費(思いやり予算)増額など日本側の負担増に言及する可能性はゼロとは言えない。別の日本政府関係者は「(日米の)関係の緊密さを盛り上げて、防衛費の増額を求められても困る」と困惑気味に話した。【中村紬葵】

毎日新聞

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