選択的夫婦別姓、野党3党が法案提出 思惑さまざま、維新は皮肉も

2025/06/04 21:14 

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 選択的夫婦別姓の導入を巡り、衆院法務委員会で4日、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の野党3党がそれぞれ提出した法案の質疑が始まった。国会で別姓法案の質疑が行われるのは28年ぶり。いずれの党も単独では法案の成立が見込めない中、立憲と国民民主が歩み寄る姿勢を見せる一方、維新は別姓法案をまとめられなかった自民党との近さをアピールするなど、政党間の駆け引きが続いた。

 「法制局にも確認したが、法的効果は全く一緒。実質的に同じ内容かなと認識している」(立憲・黒岩宇洋氏)

 「立憲案において、別氏夫婦が定める子が称すべき氏と、民法上の効果が同じであることは指摘の通り」(国民民主・円より子氏)

 立憲と国民民主の法案はいずれも制度導入を求める内容で、子の姓について、立憲案が夫婦の婚姻時にいずれかに決めるのに対し、国民民主案は婚姻時に戸籍の筆頭者を定め、子の姓は筆頭者と同一にする点で違いはあるものの、類似点は多い。この日の質疑でも両党の担当者は類似点に言及した。

 一方、旧姓の通称使用の法制化を主張する維新の藤田文武前幹事長は、かつて国民民主の玉木雄一郎代表が旧姓使用の拡大に言及していた点を踏まえ、「玉木さんの説明を聞いているとほぼうちの案だと思っていた。だが、出てきたのは立憲案だった」と皮肉った。質疑を通じて国民民主内の制度に慎重な保守層を取り込みたい考えだ。

 さらに藤田氏は、質疑の機会がなかった自民についても、同党がまとめた旧姓の単独使用を可能とする見解を指し、「我が党の案のことだ」と類似性を強調。「法案にしっかりと賛同いただき、一歩前に進めていただきたい」と主張した。

 歩み寄るだけでなく、法案の課題も浮き彫りになった。黒岩氏は維新案について「改姓による社会生活上の不便、不利益の解消といった基本的な問題意識を共有している」としつつ、「改姓を強いられる人格権、アイデンティティーの問題は解消されていないのではないか」と指摘した。

 政党間の協力に向けた地ならしが進むが、衆院法務委の委員は34人で、委員10人の立憲と2人の国民民主が組んでも過半数に届かない。維新も3人に過ぎず、自民は最多の14人を抱えるが一枚岩ではない。いずれの党も過半数確保は容易ではない。質疑は活発化したが、衆院法務委で採決に持ち込めるかのめどは立っていない。【富美月、園部仁史、森口沙織】

毎日新聞

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