防災庁の役割、有識者会議が報告書 各府省庁への「勧告権」付与

2025/06/04 20:48 

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 政府が2026年度に新設を目指す防災庁の役割を検討する有識者会議が報告書をまとめ、4日に公表した。復興庁やデジタル庁と同じく、内閣直下の組織として専任の大臣を配置。各府省庁に対する「勧告権」などの権限を持たせ、災害対策の司令塔機能を担う組織にするよう提言した。

 石破茂首相は近く、報告書に沿った形で防災庁の組織概要を発表する。政府内で予算や定員など具体的な検討を進め、来年の通常国会への設置関連法案の提出を目指す。

 報告書は防災庁の役割として(1)基本的政策・国家戦略の立案(2)被害を最小化するための対策を平時に講じておく「事前防災」の強化(3)災害発生時から復旧・復興までの継続的な支援――を挙げた。

 こうした役割を果たすには、役所間の縦割りをなくして施策を統一的に進める必要があるとした。

 具体的には、現在は内閣府の一部門である防災担当部局を防災庁に再編し、内閣直下の組織として専任の大臣を置く。その上で、各府省庁の取り組みが不十分な場合には必要な措置を取るよう指導できる「勧告権」を付与することを求めた。

 人材に関しては、専属の職員の採用・養成や外部の専門的な人材の積極登用を提言した。

 4日に報告書を受け取った赤沢亮正・防災庁設置準備担当相は「防災行政のこれからの指針そのものだ。内容を必ず実現させる」と述べた。

 ◇地方自治体が防災庁の誘致合戦

 防災庁を巡っては、全国の県や市などが誘致を目指して次々と名乗りを上げている。4日には岡山県の伊原木隆太知事が内閣府を訪れて西野太亮政務官と面会し、防災庁を同県に設置するよう要望した。

 誘致合戦のきっかけは昨年12月、地方創生に意欲的な石破茂首相が地方設置に積極姿勢を示したことだ。4日に公表された有識者会議の報告書には「どこで災害が発生しても、迅速に被災地を支援するための備蓄物資拠点が必要」との提言が盛り込まれた。災害対応には「地域の経済圏などにおける産官学民の総力を結集した体制が必要」とも指摘した。

 岡山県の他に誘致を表明しているのは熊本県、仙台市、北海道、福島県いわき市、群馬県、岐阜県、富山県、石川県、兵庫県、大阪府・市、高知県、佐賀県、関西広域連合。

 東日本大震災や能登半島地震などの教訓、南海トラフ地震への事前対応を進めるといった強みをそれぞれ主張している。産官学の連携や防災人材の育成、地域振興につなげたいと考える自治体もある。【最上和喜】

毎日新聞

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