「『介護難民』増えてしまう」 ”2025年問題”、従事者の危機感
「このままだと、介護サービスを利用したくてもケアマネジャーやヘルパーが見つからない『介護難民』が増えてしまう」
兵庫県尼崎市主任介護支援専門員連絡協議会会長の粟野真造さん(65)=西宮市=は険しい表情を浮かべた。高齢者と家族の相談に乗り、一人一人にどういう介護サービスを提供するかの計画(ケアプラン)を立てるケアマネジャーだが、介護保険制度への危機感は募るばかりだ。
◇団塊の世代、75歳以上に
今年、戦後のベビーブームで生まれた「団塊の世代」の全員が75歳に到達する。「2025年問題」とよばれ医療や介護の需要増大に対応できるかが課題になる。
粟野さんが担当したある家庭では、認知症の80代の女性を同年代の夫が介護していた。女性は幼少期を過ごした家を懐かしみ「家へ帰ります」としばしば一人歩きに出てしまう。夫は「いつ起き出して出て行くか心配で、夜も眠れない」と悩み、出て行こうとする妻をたたいてしまうこともあった。
粟野さんは女性にショートステイを利用してもらい、なんとか夫の睡眠時間を確保した。ひきこもりの女性を高齢で要介護認定を受けた母親が世話するというケースもあった。
◇ヘルパーも高齢化
一方で、介護が必要な人の生活を支えるヘルパーやケアマネジャーなどの人材不足は深刻だ。ヘルパーを確保しようと思うと、5~10カ所の事業所に問い合わせしなければならない。ヘルパーの高齢化も進み、70~80代は「ざら」だ。
高齢のヘルパーが酷暑の中、自転車や原付きバイクで利用者の家々を巡り、介護をしている。粟野さんも、原付きバイクで尼崎や西宮の利用者宅を訪問する際、あまりの暑さで脱水症になったことが何度もあった。「冬の寒さ、大雨の時もこたえます」。給与は安く、介護現場でのカスタマーハラスメントも深刻になっている。
◇介護報酬改定、人材不足に拍車
そうした中で、24年の介護報酬改定では訪問介護サービスの基本報酬が引き下げられた。その影響で事業所自体の閉鎖も相次いでおり、人材不足に拍車をかけているという。
00年に始まった介護保険制度は家族の負担を減らし、介護を社会で支えていこうと始まったはずだった。粟野さんは「高齢化は質も量も深刻化しているのに、介護職は人材不足。家族に介護の負担が集中して、介護虐待や介護離職の悪循環が起きています」と顔を曇らせる。
悪循環を断ち切るには、待遇改善や制度の変革が欠かせない。たとえば、ケアマネジャーは資格を更新するために、5年ごとに研修を受けなければならない。その時間や費用が負担になっているという。
政府の社会保障制度改革ではこれまで自己負担がなかったケアプランの有料化も議論されている。粟野さんは「介護が必要な人や家族がお金を気にして相談しにくくなるかもしれません」と懸念する。
選挙では物価高対策などが注目されているが、粟野さんは全世代に関わる高齢者介護にも関心を持ち「知恵を出し合ってほしい」と願う。「危機的な介護保険制度を支えることは、高齢者のためだけでなく、働き盛りの世代の人たちが、家族の介護で疲れたり離職したりすることがないようにするためでもあります。若い人も、やがて年老いて介護が必要になった時、安心して老年期をすごす準備でもあるのです」。【幸長由子】
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