少年院の妊婦に出産・育児支援へ 成人から拡大 社会復帰図る

2026/03/18 07:00 

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 法務省が2024年度に始めた成人の女性受刑者への出産・育児支援の取り組みを、女子少年院の収容者に拡大する検討を始めたことが関係者への取材で判明した。現状は中絶するか、出産してもすぐに乳児院に預けるケースが大半だが、出産・育児を経験することで円滑な社会復帰を図る。子の健全な成長にもつなげたい考えだ。

 法務省は24年度からモデル事業として、立川拘置所(東京都)に専用の育児室を整備。全国の女子刑務所から、支援を受けることが適切と判断された受刑者を拘置所に移し、外部の病院で出産後に育児室で子どもと一緒に暮らせるよう支援している。近隣の医療機関や助産師会の協力も得て、出産・育児に必要な費用は国が負担する。

 法律では子どもが最長1歳6カ月になるまで、受刑者や少年院の収容者は施設内で一緒に過ごせると定める。1歳6カ月になった時点で親族や乳児院に預けられることになるものの、支援を受けた受刑者がそれまでの間、育児に取り組む事例も出てきており、少年院の収容者にも拡大する方向となった。女子少年院は全国に九つあり、立川拘置所のような対応が可能か検討を重ねる。

 法務省によると、全国の少年院の女性収容者は減少傾向にあり、この10年間はおよそ年間200~100人で推移。出産件数の正確な統計はないものの、年間数件あるという。女性受刑者の新規の年間収容も15年からの10年間で約2100人から約1500人と減少傾向にあるが、出産件数は少年院と同程度のため、出産割合(収容者数に対する出産件数)は少年院のほうが高いとみられる。

 女子少年院の収容者が出産しても、まもなく乳児院などに預けられることが多く、過去に収容者が施設で育児をした事例は確認できないという。

 法務省の元職員で少年院で院長を務めた経験がある服部達也・京都産業大教授(矯正社会学)は「妊娠した女子少年院の収容者には、予期せぬ妊娠や貧困といった背景も少なくない。児童福祉法が定める継続的な支援が必要な『特定妊婦』と同様に成人以上のケアが求められる。外部機関と連携して社会復帰を見据えたサポートが欠かせない」と話す。

 ◇女子収容者に性暴力のトラウマ多く

 法務省は2023年版の犯罪白書で、家族内暴力や家族の飲酒問題といった非行少年の「逆境体験」を初めて分析した。回答した収容者564人(男子508人、女子56人)のうち「逆境体験」をしたとの回答は87・6%に上った。男女別では男子より女子の割合の方が高かった。

 トラウマとの向き合い方について少年院での講話に取り組んでいるNPO法人「レジリエンス」(東京)の中島幸子代表は、女性の収容者の特徴として「過去に性暴力を受けた子が多く、トラウマの影響は男子少年より大きい」と指摘する。面談した中には、妊娠していても父親と連絡がつかなかったり、今後の生活で頼れる大人がいなかったりするなど、性や子育てについて知識が不十分と感じることが少なくないという。

 中島さんは「女子少年院の収容者は幼少期の家庭環境が過酷なことが多い。さらに妊娠している場合は更生に向けた課題が重層的になる。少年院だけでの対応は難しく、心のケアと、出院後に地域社会で孤立させない仕組みが必要だ」と話す。

 法務省によると、少年院では発達障害などの特性がある収容者が増加傾向にあり、個別ニーズに合わせた更生プログラムの強化が求められる状況にあるという。今回検討されている出産・育児支援も、大人の自覚や責任を促し、子育てを通じて自身や他人を大切にする心を育むことが期待される。

 幹部の一人は「不安を抱える妊産婦の収容者が安心できる『居場所』が必要」と出産・育児支援の意義を語る。【飯田憲】

毎日新聞

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