同性パートナー間の生体腎移植を実施 京大病院「有益な前例に」
京都大医学部付属病院は30日、今年5月に女性同士のパートナー間で生体腎移植を実施したと発表した。生体臓器移植は金銭のやり取りに基づく手術などを防ぐため、ドナーは原則として親族に限定されている。日本移植学会などによると、過去にも同性パートナー間の移植事例はあったが、公表されたケースは初めてとみられる。
同病院によると患者とドナーは京都市内で同居しており、2023年8月、同性カップルを婚姻に相当する関係と証明する京都市のパートナーシップ制度に基づき宣誓。患者は22年ごろから慢性腎不全を患い、透析や腎移植が必要と診断されていた。
パートナーがドナーになることを希望し、京大や移植学会の倫理委員会の承認を経て、手術で左腎臓を患者に移植した。移植後の腎機能は良好で、両者ともに社会復帰しているという。
国内での生体臓器移植は、移植学会の倫理指針でドナーを原則「6親等以内の成人親族または3親等以内の姻族」に限定。親族外の場合は、有償提供ではなくドナーの自由意思によるものなのか、倫理委で厳しく審査される。
同日の記者会見で同病院泌尿器科の小林恭教授は「性的少数者であるという理由で移植医療を享受できないと諦めている患者さんにとって有益な前例になる。必要な手続きをしっかり踏めば、同様の例も可能だ」と意義を述べた。患者とドナーの女性は同院を通じて「当初は血液透析に頼るしかないと心苦しく感じていた。同様の境遇の患者さんに希望の光が当たることになればうれしい」とコメントした。【田中韻、菅沼舞】
◇多様性認める好例
元日本臓器移植ネットワーク臓器移植コーディネーターの藤田医科大・朝居朋子教授の話 現行の法律では同性パートナーは配偶者として認められず、生体移植を諦めてしまうカップルもいると思われる。同性カップルが医療の疎外者となることなく移植医療の恩恵を受け入れられることを広く社会に知らせ、医療現場が多様性を認める好例となった。
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