北九州市の2024年の人口 60年ぶり「社会増」 雇用創出で

2025/01/07 21:18 

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 北九州市は7日、転入者数から転出者数を引いた2024年の「社会増減」がプラス492人となり、1964年以来60年ぶりに増加に転じたと発表した。市はかつて製鉄業の隆盛で九州最大の都市だったが、「鉄冷え」の影響で人口の流出が続いていた。市は改善の要因にIT企業を中心とした企業誘致による雇用創出で、20~30代の若年層が増加したことなどを挙げた。

 市によると、24年は4万2081人が転出した一方、転入は4万2573人だった。日本人は1310人の転出超過だったが、0~14歳で210人、20代で378人、30代で188人がそれぞれ23年比で改善した。地域別では、福岡以外の九州各県からの転入超過が904人で23年比357人増となり、福岡市や東京圏など大都市圏への転出超過幅も改善された。

 63年に周辺5市が合併して誕生した北九州市は、製鉄などの重工業で栄え、しばらく人口増が続いたが、「鉄冷え」の時代に産業構造の転換ができず、人口は79年の106万8415人をピークに減少に転じた。05年には100万人を割り込み、25年1月1日現在の推計人口は90万6941人。市は全国の政令市の中で社会減が最も長く続いていた。

 改善の大きな要因は企業誘致だ。この10年間で、若手の雇用が期待されるIT関連企業の進出が188社あり、うち46社は23年度に進出した。北九州市に本部を置く特定危険指定暴力団「工藤会」は福岡県警による徹底した捜査で組織が弱体化。市の体感治安が向上したことも進出を決める好材料になったとみられる。

 技能実習生や留学生など外国人の転入増も影響した。16年以降の転入超過は新型コロナウイルス禍を除き1000人超で推移。22、23年は2000人を上回り、24年は1802人と日本人の転出超過を埋める形になった。

 一方、死亡者数が出生者数を上回る24年の「自然減」は過去最多の7927人。高齢化率は30%超と政令市で高水準で、人口減少への対応は今後も喫緊の課題になる。

 武内和久市長は記者会見で「反転攻勢ののろしが大きく上がり、60年ぶりに扉が開いた。これは大きな一歩だ。この街の勢いをさらに強化していきたい」と述べた。【山下智恵】

毎日新聞

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