茨城・鹿島沖漁船沈没 悪天候、不明3人の手がかり見つからず

2025/01/07 21:38 

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 茨城県鹿島港沖でイワシ漁をしていた巻き網漁船が転覆・沈没した事故で、海上保安庁や地元漁業者らは7日も朝から船を繰り出し、行方不明となった乗組員3人の懸命な捜索を続けた。7日午後5時半現在、行方不明者の手がかりを発見することはできなかった。

 事故は6日午前2時5分ごろに発生。鹿島港から東約31キロの沖合で、大津漁協(北茨城市)に所属する漁船「第8大浜丸」(80トン)が転覆・沈没し、日本人とインドネシア人の乗組員20人のうち17人が救助されたが、50代と60代の日本人男性2人が死亡。3人が行方不明となっている。

 鹿島海上保安署などによると、7日は巡視船など3隻や固定翼機で周辺海域を捜索。潜水士は投入されておらず、海面の捜索に注力し、捜索活動を続けた。仲間の漁船も大津港などから捜索のために出発したが、悪天候のため途中で引き返した。8日以降は天候などをみて判断する。関係者によると、魚群探知機などにより大浜丸が沈没した場所は判明しているという。

 事故直後、現場海域から千葉県の銚子港まで亡くなった2人らを搬送した第11不動丸の大熊和也さん(54)は「うねりや波が高く、危ないので1、2時間で引き返してきた。仲間なので見つけてやりたいが、自然には逆らえない」と話した。

 一方、国の運輸安全委員会は7日、船舶事故調査官を千葉県の銚子市に派遣し、調査を開始。大浜丸を所有する会社の社長や乗組員らから事情を聴いた。

 鹿島海保によると、救助された乗組員は「網に魚が多く入ったことで徐々に船体が傾いた」と証言している。巻き網漁業関係者によると、大浜丸が網を引き上げようとしたところ、網の重さで船体が傾き、水が入ってきて5分ほどで沈没したという。

 取材に応じた運輸安全委員会の井桁正樹調査官は、魚を囲いすぎて転覆する事例は過去にもあるとしつつも、「今回の事故の原因になっていると断定することはできない。丁寧に情報を集めていく」と話した。

 探索船不動丸5号艇で船長を務める中村博昭さん(54)は10年ほど前まで、今回沈没した船に乗務した経験がある。当時、何度も500トンのイワシを取ったことがあるといい「200~300トンでひっくり返る船ではない」と首をひねる。

 網に追い込まれたイワシの群れは、逃れようと海の深い方向へ一気に泳ぎだすことがあるという。「その時グーッと船が傾くけど(重しの)バラストで調整できるし、さらに強い力がかかっても網が自然に破れてイワシが逃げ出す。破れなくても、刃物で簡単に破れるはずだ」と話す。

 鹿島海保は沈没した現場周辺の水深について毎日新聞の取材に「答えない」としているが、捜索を手伝っている漁業関係者によると、周辺は水深約230メートルという。

 一般社団法人「水難学会」の理事で長岡技術科学大の斎藤秀俊教授は「ソナー(探知機)を使い場所を特定した上で、カメラやロボットを入れて捜索する。ただ、水深100メートルを超えると発見は難しい」と話し、捜索が難航するとの見方を示した。【西夏生、斉藤瞳、田内隆弘、近藤卓資】

毎日新聞

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