借金返済のため闇バイト 初公判で被告が起訴内容認める 札幌地裁

2025/01/24 19:30 

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 札幌市豊平区の住宅で住人の男性を縛って現金を奪ったなどとして強盗や窃盗などの罪に問われた川崎市の建築作業員、鈴木陸被告(25)と、鈴木被告の送迎役を務めたとして窃盗ほう助罪などに問われた札幌市の無職、三田兼輔被告(24)の初公判が24日、札幌地裁(井戸俊一裁判官)であり、両被告は「間違いありません」と起訴内容を大筋で認めた。

 鈴木被告の弁護人は「強盗の意思はあったが、恐喝罪の範囲にとどまる」として法的評価を一部否認した。

 起訴状によると鈴木被告は昨年10月5日、札幌市豊平区の住宅に侵入し、住人男性(当時79歳)に馬乗りになって両手足を縛った上で現金3万円を強奪。同月4日には、同市南区の邸宅に侵入しブローチなど53点(約14万円相当)を盗んだ。

 三田被告は同日に邸宅の下見をし、鈴木被告を車に乗せて現場まで送り届けたとしている。

 検察側は冒頭陳述で、鈴木被告が昨年9月中旬ごろから借金返済のためにX(ツイッター)で闇バイトを探していたと指摘した。

 氏名不詳の「デイダラ」「Sコバル」と名乗る人物の指示を受け、「詐欺師の家」から金を回収する仕事として窃盗や強盗に及んだとする。

 三田被告も同年9月ごろ、仕事を休んだことで給料が少なくなったため、運び屋の闇バイトを検索。窃盗や強盗をする目的を知りながら、自身が運転するタクシーで鈴木被告を現場に送ったという。

 ◇「詐欺師から金を回収」と指示され

 一方、鈴木被告の弁護人は冒頭陳述で、鈴木被告が闇バイトに至った経緯や事件の詳細を明かした。

 鈴木被告は2023年4月、解体業の親方と連絡がつかなくなったことで、下請け業者に支払う料金など計約170万円の借金を背負った。

 昨年6月から千歳市の半導体メーカー「ラピダス」の工場建設現場で働き始めたが返済が追いつかず、9月ごろからXで闇バイトを探すようになったという。

 たどり着いたのが、秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」だった。

 「空き巣はできますか?」「詐欺師の家からお金を回収する作業なので、捕まらない案件です」

 デイダラと名乗る氏名不詳の人物の言葉で空き巣の実行を決意した。

 10月4日、札幌市南区の邸宅に着くと、指示役は「Sコバル」と名乗る人物に変わった。

 鈴木被告はSコバルの指示通り、ガムテープを張った窓をハンマーで割って侵入。貴金属を盗み、換金ショップに持ち込んで約14万円を得た。

 デイダラにさらに1件の空き巣を提案された鈴木被告は、同月5日に札幌市豊平区の住宅に侵入した。

 この家も無人だと思っていたが、3階で住人男性に遭遇した。

 電話をつないでいたSコバルの指示で男性の手足を縛り「金はどこにある」と聞いた。

 男性から現金3万円を受け取ったが、「(Sコバルらが言ったように)詐欺をやっている人の家ではない。自分は普通のおじいさんから金を取ろうとしている」と思い、その場で現金を返した。

 住宅を出た後も、それを知らないSコバルから「たたけ、張り手しろ」と暴行を指示された。鈴木被告は電柱や自分の頰や胸をたたく音でごまかした。

 結局、Sコバルやデイダラとの連絡を絶つために通話を切ってアプリを削除したとし、弁護人は「犯行を深く反省している」と訴えた。

 両被告の公判は次回(期日未定)以降、分離される予定。【後藤佳怜】

毎日新聞

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