ネコのiPS細胞作製に成功 病気の解明期待 大阪公立大研究チーム

2025/02/22 14:30 

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 人間と同様にネコの寿命が延び、慢性腎臓病や糖尿病などの治療のニーズが高まっている。大阪公立大の鳩谷晋吾教授(獣医学)らの研究チームは、病気の解明や治療薬の開発に役立てようと、さまざまな種類の細胞になれるネコの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した。iPS細胞から臓器の細胞を作製することで、動物実験をせずに治療に役立つ研究ができると期待される。

 ネコのiPS細胞を作製する試みはこれまでも行われていたが、「らしきものはできたが、不完全だった」(鳩谷教授)という。今回は多様な細胞になれる能力を持つ、高品質なiPS細胞を作ることに世界で初めて成功したとしている。

 ヒトのiPS細胞は、京都大の山中伸弥教授が四つの遺伝子(山中因子)を組み込んで細胞を「初期化」する方法を開発して実現できた。鳩谷教授らのチームは十数年に及ぶ研究の末、これら山中因子に加えて二つの因子を特定し、ネコの皮膚などから採れる細胞に導入してiPS細胞を作製。2024年9月に国際学術誌で発表した。

 入手しやすいため避妊手術で除去した子宮に着目、子宮の細胞からもiPS細胞を作ることに成功した。

 iPS細胞の働きを詳細に調べるためには、受精卵から作られ、iPS細胞と同様に多種の細胞に分化できる胚性幹細胞(ES細胞)との比較が必要になる。鳩谷教授らは去勢・避妊手術で廃棄される精巣や卵巣から採取した精子と卵子を体外受精させ、ネコES細胞も世界で初めて作製した。

 鳩谷教授は「普段から獣医師として、治療が困難なネコの病気をたくさん診てきた。ネコiPS細胞を活用し、難しい病気の治療法開発や病態の解明をしていきたい」と語る。今後はネコiPS細胞を多くの研究機関に提供する予定だという。【菅沼舞】

毎日新聞

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