ひろしまプライドパレード 10月に初の単独開催 性の多様性を周知

2025/03/23 15:38 

 LGBTQなど性的少数者の存在を広く知ってもらおうと、当事者や支援者らが広島市中心部を歩く「ひろしまプライドパレード2025」が、10月11日に開催される。これまで「ひろしまフラワーフェスティバル」のパレード内で実施されたことはあるが、単独開催は初めて。実行委員会のメンバーは、当事者が自信を持ち、誰もが生きやすい街になるきっかけになればと準備を進めている。

 パレードは、広島市中区の広場「アリスガーデン」を発着点とし、性の多様性を象徴するレインボーフラッグなどを手に、広島本通商店街含む約1・5キロを約1時間かけて歩く。アリスガーデンでは、当事者団体や協賛企業を紹介するブースのほか、当事者らによる対談などステージ企画も予定している。

 パレードの発起人で、共同実行委員長のイチさんは「過去の自分と同じように、セクシュアリティーを理由に好きな古里を離れる選択をしてほしくない。パレードを通じ、近くに仲間がいることを知って自信を持ってほしい」と企画した理由を説明する。

 イチさんは、現在30代の会社員。広島市で女性として生まれたが、物心ついた頃から性自認が定まっておらず、恋愛対象は女性だ。高校生の時、母親に打ち明けると受け入れてもらえず、「もう言っちゃだめなんだ」と思った。

 インターネットで調べると、東京には性的少数者でつくる大学のサークルや支援してくれる場所があると知った。「広島にいたら周囲に話せる人や同じ悩みを持つ仲間には出会えない」と考え、大学進学で上京し、性的少数者が集まる早稲田大の公認サークルに所属した。

 多様な当事者の仲間との交流は「そのままの自分でいていいんだ」と自信を持たせてくれた。大学2年の時には先輩が企画したパレードで新宿の街を歩き、性の多様性をアピールした。本当の自分を明かさず生きてきたイチさんには新鮮で、「いつの日か地元でもパレードをやりたい」と強い気持ちが芽生えたという。

 卒業後は広島で就職。女性パートナーと2023年11月に島根県で初開催されたパレードに参加した時、大学で同じサークルだった友人と偶然再会した。友人が山口県のパレードの実行委員会で事務局長を務めていると知ったイチさんは、「広島で開催するためのノウハウを学びたい」と考え、24年6月に山口市であったパレードの運営に携わった。

 その後、広島県内でも準備を続け、ついに地元での開催にこぎ着けた。イチさんは「パレードに参加できなくても、遠くから見るだけでも十分。『自分を隠さなくてもいい、当事者や理解者が広島にも大勢いるんだ』と間接的に勇気づけられるかもしれない。継続して開催できたらいい」と語る。

 2月に実行委員会が開いた記者会見で、共同実行委員長の河口和也・広島修道大教授(ジェンダー、社会学)は「周りにセクシュアルマイノリティーの人がいるという感覚は、まだまだ県内でも持たれていない。街の中を歩いて『私たちはここにいますよ、広島に存在して暮らしていますよ』と市民に伝え、理解を深めてもらう方向に持っていければ」と話した。

 パレード参加の申し込みや、運営費用を募るクラウドファンディング(CF)は6月から受け付けを開始する予定。【根本佳奈】

毎日新聞

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