日本ブラジルの友好、一層深く 宮中晩さん会 天皇陛下おことば全文

2025/03/25 20:14 

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 国賓として来日したブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する天皇、皇后両陛下主催の宮中晩さん会が25日、皇居・宮殿で開かれた。天皇陛下は冒頭のあいさつで日系人や日本で暮らすブラジル人の活躍に触れ「両国の友好関係がますます深まることを切に願います」と述べられた。国賓の来日は新型コロナウイルス感染症の影響で6年ぶりとなった。

 ◇宮中晩さん会での天皇陛下のおことば

 この度、ブラジル連邦共和国大統領ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ閣下が、令夫人と共に、国賓として我が国をご訪問になりましたことを心から歓迎いたします。

 私たちは本年、1895年にブラジルと我が国との外交関係が樹立されてから130年の節目の年を迎えます。この130年にわたる交流の中で、日ブラジル両国関係は、政治や経済にとどまらず、文化、スポーツなど幅広い分野に裾野を広げ、近年ますます緊密になっています。ブラジルから日本への訪問者数も年々増えています。また、約21万人のブラジルの人々が現在我が国で生活し、経済活動や地域社会の活性化、そして日本とブラジルとの人的交流に重要な貢献をされており、日本各地で毎年ブラジル・フェステイバルが開催されています。ブラジルでは、若い日系人の方々の活躍もあり、北部のアマゾン地域から南部に至るまで、日本祭りが各地で大きな盛り上がりを見せているとも聞いております。本年の「日本ブラジル友好交流年」を通じて、両国の友好関係がますます深まることを切に願います。

 顧みれば、1982年、私の最初の海外公式訪問国はブラジルでした。当時のフィゲイレード大統領をはじめ、ブラジルの皆さんから温かい歓迎を受けたことをよく覚えております。それとともに、貴国の国土の広さ、多様性、そして人々の明るさが強く印象に残っています。

 2008年、日本人ブラジル移住100周年にあたり、私は再び貴国を訪問いたしました。その際には、ブラジリアで貴大統領から大変心のこもったおもてなしを頂きました。それから17年、ご夫妻をこうして国賓として日本の地にお迎えし、晩さん会を開催できますことを誠に感慨深く思います。

 ブラジルを訪問した際には、初期の日本人移住者の皆さんの手作りの道具類や資料を目にし、移住された皆さんが、さまざまなご苦労を乗り越えながら努力を重ねられたことを感じました。祖国日本を遠く離れ、ブラジルに移住された方々とその子孫である日系人の方々は、ブラジル社会の発展にも大切な一員として貢献してこられました。その背景には、日本人移住者を温かく迎え入れてきたブラジル政府、そしてブラジル国民の皆さんのご厚意があったことを忘れることはできません。ルーラ大統領の国賓としての訪日を歓迎する晩さん会に、これまで両国の友好関係の増進に寄与されてきた日系ブラジル人の方々が出席されていることをうれしく思います。

 日本とブラジルは、長年にわたってさまざまな分野で協力してきました。持続可能な開発の分野では、ブラジル北部において、日系農家の方々が胡椒(こしょう)や熱帯果樹、樹木栽培を組み合わせた森林農法を開発され、我が国からの専門家の派遣や熱帯果樹のジュース加工工場の整備等の支援を通じて、持続的な土地利用や森林保全が今日まで引き継がれています。また、ブラジルの広大なサバンナ地帯で、「不毛の大地」と呼ばれていたセラードを農業地帯として開発する過程では、日系人や我が国のJICAを含む多くの人々が尽力されたと聞いています。私自身も、ブラジリアの「セラード農牧研究センター」を2度訪問する機会がありました。日本とブラジルの長年の協力により、ブラジルが今や世界に誇る食料供給国となっていることを喜ばしく思います。

 現在、世界では、気候変動の影響を受けた自然災害が多発しています。昨年、貴国リオ・グランデ・ド・スール州で発生した豪雨による洪水により、多くの尊い命が失われ、被災された方も多数に及んだことに心が痛みます。一日も早い復興を心よりお祈りいたします。日本でも、昨年、能登半島地震をはじめ、豪雨などによる多くの自然災害が発生しました。貴大統領が重視しておられる環境・気候変動の分野、そして防災の分野において、今後も日本とブラジルが協力して世界に貢献していくことを願っております。

 東京では桜も咲き始め、我が国は今、美しい春を迎えようとしています。大統領ご夫妻の我が国ご訪問が、実り多く、思い出深いものとなることを願うとともに、お二方のご健勝とブラジル国民の幸せを祈り、杯を上げたく思います。

毎日新聞

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