トランプ氏、対露制裁の一部緩和検討 黒海での安全航行合意で条件

2025/03/26 10:49 

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 米政府は25日、ロシアの侵攻を受けるウクライナ情勢を巡り、両政府と黒海での航行の安全の確保と、武力行使を排除することで合意したと発表した。両国が既に同意した「エネルギー施設への攻撃停止」を拡大させた格好だ。ただロシア側は履行の条件として対露制裁の一部緩和を要求し、ウクライナ側は批判。エネルギー施設への攻撃もいまだに続いており、今回も合意の履行が焦点となる。

 米側の発表によると、黒海で商業船を軍事目的で使用しないことでも双方と合意。エネルギー施設への攻撃停止については、実施に向けた措置を策定することで一致した。また、これらの合意の履行を支援する目的で「第三国」の関与を歓迎するとした。

 米国は23~25日、ウクライナ、ロシアとそれぞれサウジアラビアで実務者協議を開いていた。

 ロシアは当初は協議結果を公表する予定はないと説明していたが、独自に内容を公表した。露大統領府によると、黒海に絡んだ合意を履行するに当たり、食品や肥料の国際貿易にかかわる国営のロシア農業銀行やその他の金融機関への制裁を解除するよう求めた。

 ロシア農業銀行は、欧米の経済制裁で国際決済システム「国際銀行間通信協会」(SWIFT)から締め出されており、SWIFTに再アクセスできるよう要求している。また、食品と肥料の貿易にかかわるロシア船舶に対する制裁の解除も条件として挙げた。

 トランプ米大統領は25日、制裁の緩和を検討する考えを示した。ホワイトハウスで、制裁緩和の可能性に関する記者団の質問に「今、全てについて考えている。5~6個の条件があり、全てを検討している」と述べた。ただ、米国が制裁緩和を決めれば、欧州諸国から反発が出る可能性がある。

 エネルギー施設の攻撃停止に関し、露側は具体的な施設として、石油やガスのパイプライン、発電所や変電所などの電力インフラ、原子力発電所、水力発電のダムなどを挙げた。合意の延長や、いずれかの国が違反した場合は撤回の可能性もあるとしている。

 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、合意は米国の発表後即時に発効されたと指摘。その上で、ロシアが合意の履行に条件を付けたことを念頭に、「ロシアは既に(合意を)ねじ曲げることを始めた」と批判した。

 米国とウクライナは11日の高官協議で、30日間の全面的な停戦で合意したが、ロシアは受け入れを拒否。双方はエネルギー施設への攻撃停止には同意したものの、攻撃は続いていた。

 米政府は停戦に向けて、エネルギー施設への攻撃停止▽黒海での停戦▽停戦ラインの確定――という3段階の流れを想定する。【ワシントン松井聡、大久保渉、ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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