被害把握に「宇宙の目」JAXA、熊本地震データ使いプログラム開発へ
熊本地震の「本震」から16日で9年。本震の2日前に起きた「前震」とあわせて観測史上初の2度の最大震度7を記録し、甚大な被害をもたらした。建物倒壊は広範囲に及び、被害状況を把握するのに多くの時間を要した結果、初動対応に課題を残した。そんな苦難の記録を、将来の命の救済につなげようとする取り組みが始まっている。キーワードは「宇宙からの目」だ。
「空から広く全体を捉えることができる特徴を生かし、災害時に衛星を役立てる仕組みをつくりたい」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)衛星利用運用センターの川北史朗・技術領域主幹は強調する。JAXAが取り組むのが、地球観測衛星「だいち2号」と「だいち4号」を使った災害被害の早期把握だ。
だいち2号や4号は、照射した電波の反射によって地表を観測し画像化できる。光を捉える光学衛星と異なり、夜間や悪天候でも観測が可能だ。平時から画像を撮りため、災害前後の画像を比較、分析し、観測から2~3時間程度で建物被害を棟単位で特定できる。
JAXAは2020年ごろに開発を開始。だが、川の氾濫などで一帯が浸水して「面」で被害状況を確認できる水害とは異なり、地震の被害は建物によって程度が異なるため、衛星画像から被災状況を把握するのは簡単ではなかった。
24年1月の能登半島地震でも、JAXAは甚大な被害を受けた石川県の珠洲(すず)市や輪島市など市町ごとに被害を割り出そうと試みたが、捉えられたのは実際の家屋被害の1~3割程度。構造や立地環境が建物ごとに異なることが原因とみられる。一方、発生から日没まで時間がなく、人海戦術による被災状況の把握は困難を極めた。
課題を解決しようとJAXAが協力を求めたのが、熊本地震で約20万棟の住宅が被害を受け、うち約4万3000棟が全半壊した熊本県だった。
地震後に罹災(りさい)証明書発行のため、被災自治体の職員が1棟ずつ訪ね歩き「全壊」「大規模半壊」「半壊」などを判定した、他にはない膨大なデータがある。それを活用し、全壊の住宅であれば、衛星画像でどのような特徴が出るかなどをプログラムを使って学習し、被害把握の精度を高めるのが狙いだ。
JAXAの要請に、県は「熊本の教訓を全国の災害対応に生かせるなら本望だ」と応じ、25年1月、データを提供する連携協定を締結した。
こうした技術が確立されれば、迅速な救助派遣や支援物資の配置などに生かせると見込まれる。熊本地震時に、阿蘇広域消防本部南部分署長として対応に当たった藤原松男さん(65)は「災害対応が大きく変わるかも」と期待する。
管轄していた阿蘇地域は集落や別荘地が広範囲に点在する。「本震」で熊本市方面につながる熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋が崩落し、道路も寸断された。温泉宿にいた高齢の宿泊客約30人が孤立するなど、避難誘導に苦労した。建物被害の推定ができれば「どの地域を優先して避難させるかの判断がつき、救助もスムーズに進むのではないか」と話す。
一方、県の災害対策本部が置かれた県庁では、地震直後、自治体や消防などから上がってきた人的被害や通行止めの情報を色分けした付箋に書き分け、地図に落とし込む作業が続けられた。職員は被害の全体像の把握に多くの時間を費やさざるを得なかった。
当時、県北エリアの災害対応に当たった橋本誠也県央広域本部長(59)は「断片的な情報を積み重ねることに時間がかかった。特に夜間は入ってくる情報が少なく、全容を把握するのは難しかった」と振り返る。
JAXAは熊本県のデータを生かしたプログラムについて、27年3月末までの完成を目指す。川北主幹は「情報を必要とする自治体側の声を聞きながら進め、現場で役立つ情報をしっかり届けられるようにしたい」と意気込む。【山口桂子】
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