ハンガリー、性的少数者に圧力 憲法改正で活動制限を可能に

2025/04/17 01:04 

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 ハンガリーで、LGBTQなど性的少数者の活動を政府が制限できる憲法改正案が可決された。性別は男性と女性の二つしかないと規定し、性的少数者の公共の場での集まりを政府が禁止できるとしている。野党や人権団体は強く反発している。

 強権的な政治手法を強めるオルバン首相は近年、性的少数者への圧力を強めている。改正案は14日に国会(1院制)で可決された。オルバン氏の与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が国会で多数を占めるため、賛成が140票で、反対の21票を圧倒した。

 ハンガリーでは2020年、誕生時の性別からの変更を禁じる法律が作られ、21年には18歳未満向けの広告などでの同性愛の描写が禁止された。憲法改正に先立つ今年3月には、多様性の象徴であるレインボーの旗を掲げたり、性別と異なる服装をしたりして集会に参加することを禁止する法律が成立。性的少数者への弾圧姿勢はエスカレートしている。

 今回の憲法改正も激しい反発を呼び、14日には野党や抗議のために集まった人たちが国会議事堂を封鎖しようとする騒ぎとなった。

 野党などから特に批判されているのが、3月に成立した法律で、集会の取り締まりのため当局が顔認証機能つきの監視カメラを使えると定められた点だ。ハンガリーでは近年、犯罪捜査のため監視カメラの設置が広がっているが、政敵の監視に利用される懸念が生じている。

 ハンガリーの人権NGO「ハンガリー市民自由連合」の法律家、アダム・レンポート氏はAP通信に対し「人々が訴追されることを恐れて公共の場で政治的な考えを表明できなくなる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 オルバン政権が性的少数者への締め付けを強めている背景には、伝統的な家族観を守る姿勢を打ち出すことで、保守層からの支持をつなぎとめたいからだとの指摘もある。オルバン氏は10年に首相に返り咲いて以降、高い支持率を背景に長期政権を率いてきた。

 だが近年では強権的な手法への不満を背景に人気に陰りが見えている。特に昨年活動を開始した新しい保守系野党「ティサ(尊重と自由)」はオルバン政権の汚職体質などを批判し支持を拡大。ハンガリーの独立系ニュースサイト「テレックス」によると、先月実施された世論調査ではティサの支持率が46%で、フィデスの37%を上回った。独有力誌「シュピーゲル」は、有力な政敵の登場によってオルバン氏が「いらだちを増している」と指摘している。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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