幅4メートル→半分に 愛媛の「ガリバートンネル」に入ってみた

2025/05/01 08:30 

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 愛媛県西部の八幡浜市。伊方町との境に近い、佐田岬半島の付け根部分の山中に、独特な構造のトンネルがある。アニメ「ドラえもん」に登場するひみつ道具「ガリバートンネル」とも呼ばれるという、そのトンネルを訪ねてみた。

 県庁所在地の松山市から車を2時間ほど走らせ、細く曲がりくねった山道を恐る恐る上った先に、八幡浜市方面(東側)と伊方町方面(西側)をつなぐ「大峠隧道(ずいどう)」はあった。外観は少し古びた印象は受けるが、一見すると普通のトンネルに見える。ただ、入り口には、2メートルの高さ制限を示す標識が。その下には「この先トンネル狭小」と記されている。入り口の高さは2メートル以上はあるように見えるのだが……。

 八幡浜市方面の入り口から入った。照明もない暗いトンネルを車で進むと、すぐにただのトンネルではないことが分かる。トンネルの中に、より小さく狭いトンネルがある。入り口付近の幅は4メートルぐらいはあるようだが、中のトンネルはその半分ぐらいに見える。「ガリバートンネル」と呼ばれるのは、入り口と出口の大きさが異なる形の特徴からだろう。

 「トンネルの中のトンネル」では、車のヘッドライトや出口から差し込む光を頼りに車幅ぎりぎりを慎重に進む。「対向車が来たら逃げ場がない」と、不安な気持ちもこみ上げてきたが、伊方町方面に出る前に再び幅員が広くなり、無事通過。ほっと胸をなで下ろした。

 なぜこんな不思議な構造をしているのだろうか。管理する八幡浜市建設課などによると、大峠隧道は本坑(トンネル本体)に先立ち、地質の把握などに使う小さな坑道「先進導坑」(110メートル)が1952年に完成。一時、長雨で一部が崩落するなどしたが、トンネル工事は58年に本格的に再開。先進導坑部分を復旧した上で、本坑の工事が進められていた。

 しかしその後、近くで国道197号の建設計画が浮上したことで工事は中断。入り口部分などは、幅や高さがある本坑だが、より狭い先進導坑部分(60メートル)が残されたままになったという。

 工事の中断により中途半端な状態になってしまった大峠隧道。だが、その珍しい構造からネットでも紹介され、知る人ぞ知るトンネルとなった。「たまに興味を持った人から問い合わせがある」と明かす同課担当者は「一般の人はあまり通らないかもしれないが、近くの農家の方などは利用しているようです」と話す。

 トンネル内や周辺を30分ほど観察していたが、その間に原付きバイクと軽トラックが1台ずつ通過した。山のふもとに便利な国道197号が通っていることもあり確かに交通量は少ないが、峠を抜ける生活道路として、大峠隧道は地元の人たちの役に立っているようだった。【目野創】

毎日新聞

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