世界的バレエダンサー、ギエム氏 名門バレエ団率い7年ぶり来日

2025/05/29 15:20 

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 1962年設立の名門オーストラリア・バレエ団が15年ぶりに来日し、30日から東京文化会館でルドルフ・ヌレエフ版「ドン・キホーテ」を上演する。ゲストコーチとして主要キャストを指導するのは、2015年に引退したフランス出身の世界的ダンサー、シルビー・ギエムさん。このたび7年ぶりに来日したギエムさんが公演に先立って記者会見し、「ダンサーの進化を目撃できることは喜びだ」と指導者としての思いを語った。

 旧ソ連出身のヌレエフ(38~93年)は20世紀を代表するダンサーの一人。60年代にはオーストラリア・バレエ団にたびたび客演し、70年に同団のために古典バレエ「ドン・キホーテ」の振り付けを行った。84年、パリ・オペラ座バレエ団の芸術監督だったヌレエフが見いだしたのが当時19歳のギエムさんだった。

 ギエムさんは「ヌレエフは聡明(そうめい)で、舞台に対して愛を持っていた」と語る。そして、ヌレエフ版「ドン・キホーテ」についてはダンサーに演技する余白を与えている点を挙げ、「ダンサーのポテンシャルを引き出す可能性を持っている」。

 指導者としての心構えを問われたギエムさんは「ダンサーに何をしてもらいたいかを考えることが大事で、ダンサー自身が楽しみながら踊ってもらいたい」と答えた。「ダンサーは劇場に来る人々にすてきなギフトを与える存在。その責務を果たすには技術だけでなく、心地よく踊ることが必要だ。ダンサーがどういう人間で、何を引き出すことができるのか。それを考えるのが私の役目だと思う」

 オーストラリア・バレエ団のデビッド・ホールバーグ芸術監督は「芸術監督や振付家はダンサーを型にはめようとしがちだが、シルビーはダンサーの個性を生かし、人間性を引き出してくれる」という。15年に初の日本人プリンシパル・アーティストとなり、今回キトリ役で主演の近藤亜香(あこ)さんも「(ギエムさんの指導は)一つの型にはめようとしない。いろいろなアドバイスをいただき、自信を持って踊れている」と充実感をにじませた。

 公演日時は30日午後6時半、31日午後0時半と午後6時半、6月1日正午。いずれも東京文化会館で。演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(ジョナサン・ロー指揮)。問い合わせはNBSチケットセンター(03・3791・8888)。【西本龍太朗】

毎日新聞

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