アベノマスク文書不開示決定「漫然となされた」 国に賠償命令 地裁

2025/06/05 21:09 

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 新型コロナウイルス対策で安倍政権が全国に配った布マスク「アベノマスク」を巡り、調達業者との交渉過程を記した文書を国が開示しないのは違法だと大学教授が訴えた訴訟の判決で、大阪地裁は5日、大半の不開示を取り消し、国に11万円の賠償を命じた。徳地淳裁判長は「職務上の注意義務を尽くすことなく、漫然と不開示がなされた」と述べ、国に違法な対応があったと認めた。

 安倍政権は2020年4月以降、ウイルスの感染対策として400億円超の調達費をかけて全世帯に布マスクを配布した。マスクは随意契約で発注され、上脇博之・神戸学院大教授が厚生労働省と文部科学省に、調達業者との契約過程が分かる文書の開示を請求した。国側が不開示としたため、教授側は、不開示の取り消しと国家賠償を求める訴訟を起こした。

 国側は文書について「不存在」「廃棄した」と主張していたが、訴訟の中で、国と調達業者との間でやりとりされ、各種ファイルが添付された電子メールが見つかった。国側が再調査し、職員2人のパソコンにも電子メールが残っていた。

 判決は、国には重要性が低いと考えられる文書の保存期間を1年未満と設定できる規定があるとし、国側が調達業者との一部やりとりを「1年未満文書」と位置づけて軽視していたとした。このため、開示請求後も国側は、やりとりの文書の所在を確認することなく、一律に不存在と判断したと考えられると指摘した。

 その上で判決は、「1年未満文書」も行政文書に当たり、開示対象から除外した国の対応は違法だと認めた。

 さらに、当時の繁忙状況を考慮しても、交渉経緯を記録した行政文書は作成されていたと考えるのが自然だと言及。行政文書を作成した事実があるのに、国側が「ない」として不開示決定した点も違法と認め、不開示決定を取り消して開示決定をしなかったことについても、「不開示の判断を維持するために(開示の範囲について)あえて限定的な解釈を事後的に考え出した」と批判した。

 判決後の記者会見で、上脇教授は「(不開示は)安倍政権の隠蔽(いんぺい)体質の表れ。政権の体質を厳しく批判した画期的な判決だ」とした。厚労省と文科省は「判決内容を検討し、適切に対応してまいりたい」とのコメントを出した。【国本ようこ】

毎日新聞

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