原発関連のほぼ全社、10年以内に「技能の継承困難」 人材不足で

2025/06/24 16:57 

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 内閣府の原子力委員会(上坂充委員長)は24日、2024年度版の原子力白書を取りまとめた。大手電力9社と原発関連メーカー7社の計16社を対象に、経験や技能の継承が難しくなる時期を調査したところ、15社が10年以内と回答した調査結果を紹介し、原子力人材が不足している課題を指摘した。

 白書によると、内閣府の24年度の調査では、継承が難しくなる時期について7社が「現在」、5社が「5年以内」、3社が「10年以内」と回答し、ほぼ全社が遅くても10年以内に技術継承が困難となる現状が浮かんだ。日本原子力産業協会が24年度に大手電力や原発関連メーカーなど215社に行った調査でも、約7割が必要な人数をすでに確保できず、約2割は必要数の半分以下しか確保できていなかった。

 白書によると欧米でも同様の課題があり、原発新設に際して工期の延長を招いている。このため英国では政府が30年までに4万人の新規雇用が必要と試算し、人材育成に投資する計画を発表している。

 政府がエネルギー基本計画で原発の最大限活用を掲げる一方、東京電力福島第1原発事故以降、原子力分野の人材不足が顕著になっている。白書は「人材育成とサプライチェーンの維持に向け、積極的な対策が求められる」と指摘。原子力委員会は、女性の参画やITの導入などを進めてこの問題に取り組む重要性を訴えている。【木許はるみ】

毎日新聞

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