梅雨明け「こんなに早いのか」 高温障害や異常渇水…農家に不安

2025/06/27 21:58 

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 観測史上、最も早い梅雨明けは生活にどう影響するのか。「令和のコメ騒動」が冷めやらぬ中、農家からも不安の声が上がる。

 「まさかの梅雨明け。こんなに早いのか」。西日本有数の米産地、熊本県の池田栄輔さん(39)は驚く。同県菊池市にある池田さんの田んぼでは田植えが始まったばかり。「まず水が足りるのか。そして去年みたいに猛暑になるんじゃないか」と不安を隠さない。

 池田さんの田んぼでは近年、高温障害で従来のような高い品質評価が得にくくなってきたという。「自然相手なのでどうしようもないが、毎日夕立が降ってくれることを祈るばかり」

 福岡県水田農業振興課によると、田植えを終えた水田では現在稲が伸びている時期で早期の梅雨明けにより日照時間が長くなること自体は生育に好条件だ。

 一方で、穂がつき始める8月以降も雨が降らずに猛暑が続けば、コメの白濁化などの高温障害を起こす可能性がある。2024年産米の品薄や高騰も、高温障害が一因だったとされる。

 水田農業振興課の担当者は「昨年のような猛暑となれば稲が夏バテ状態になり実のなりが悪くなってしまうかもしれない」と話す。

 影響は野菜にも及びそうだ。24年の猛暑では種の発芽不良、葉物の葉先のしおれ、トマトの着色不良などが各地で起きた。県によると、今年も早期の梅雨明けによって同様の被害が予想され、例年より収穫量が減る可能性もあるという。

 畜産業への影響も懸念される。全国有数の畜産県、鹿児島県の畜産農家では暑さ対策は重要課題の一つ。暑さで牛が夏バテすれば食欲が落ちて生育に影響するほか、暑さのストレスが繁殖に悪影響を与えるという。このため、牛舎内で扇風機や霧を噴出する細霧装置を稼働させて気温を下げたり、屋根に水をまいたりして避暑対策をしている。

 県畜産振興課の担当者は「対策の有無は売値にも関わる。例年より早めに対策を始める必要があるため、農家を巡回する際に対策を呼び掛けたい」と話す。

 降水量が減少すれば渇水のリスクも高まる。

 国土交通省によると、現在は梅雨時期のまとまった雨や寒冷地の雪解け水によって貯水率が高い地域が多い。しかし、各地で異常渇水が起きた1994年は、平年以上のダムの貯水量がありながら、カラ梅雨によって福岡市では約300日近く給水制限が続くなど全国に影響が広がった。

 国交省の担当者は「ただちに全国的な渇水の懸念があるわけではないが、このまま晴れが続けば、例年よりも渇水のリスクは大きくなる」と警戒する。

 熱中症のリスクも高まっている。北九州市などで熱中症予防の講演に取り組む医師で市健康危機管理アドバイザーの伊藤重彦・市立八幡病院名誉院長は「梅雨明け前後は残暑とともに熱中症リスクが最も高い時期だ」と注意を呼び掛ける。

 伊藤医師によると、人は暑い時には汗をかき、汗が蒸発することによる気化熱で体を冷ます仕組みがある。しかし梅雨明け前後は汗をかく機能が十分整っておらず、十分に体温が下がらない場合がある。小まめに水分を取る習慣が身についていない人も多いという。

 伊藤医師は「まずは熱中症の危険が高い時期だと自覚することが重要だ。今週末も含めてこれから全国で熱中症が多発する危険がある。室内外を問わず暑さを避けて水分を意識的に取ってほしい」と強調する。【田崎春菜、平川昌範】

毎日新聞

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