慶応大生が開発 ゲームで「闇バイト」疑似体験 「危険を身近に」

2025/07/01 08:00 

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 「闇バイト」の危険を体感してもらおうと、慶応大の学生がオンラインゲームを使った教育プログラム「レイの失踪」を開発した。ゲームを通じ犯罪グループが若者を闇バイトに引きずり込む手口を疑似体験する。開発者らは「闇バイトは誰でも巻き込まれる可能性がある。危険を身近に感じてほしい」と話す。

 「レイの失踪」は、闇バイトに巻き込まれ行方が分からなくなった友人レイを救うため、主人公の2人が謎解きをしながら、四つのステージをクリアしていくゲーム形式の教材。謎解きを進めるなかで、犯罪グループがSNS(交流サイト)を使って巧妙にレイに近づき、個人情報を開示させた後、脅迫しながら支配していくまでの過程が明らかになる。レイを直接脅した実行役、さらにその上の指示役を突き止めて警察に通報したところでゲーム終了となる。

 開発したのは、慶応大の学生が起業した「Classroom Adventure(クラスルーム・アドベンチャー)」(東京都)。情報リテラシー教材や教育プログラムを開発し、国内の学校に提供している。交流のあった中学・高校で、闇バイトに加わってしまった生徒の話を耳にし、危険性を身近に感じてもらうため、2024年12月にゲームを開発した。実際の事件の事例を集め、経験者にインタビューするなどしてリアリティーを追求したという。

 同社代表の今井善太郎さん(同大4年)は「闇バイトという言葉は知っていても、自分が巻き込まれると思っている人は少ない。ゲームで怖さを疑似体験してほしかった」と開発の動機を語る。

 これまでに全国60の中学、高校、大学で、このプログラムを使った特別授業を実施。6月27日には山梨県富士吉田市の富士北陵高校で行い、3年生約190人が参加した。

 生徒らはスマートフォンを持参し、4人1組で仲間と相談しながら謎解きを進めていく。ゲームの中で突然、実行役から脅迫電話がかかってくる展開も。あまりのリアルさに驚きながら、ゲームの世界に引き込まれ夢中でスマホを操作していた。クリアした生徒らは手を挙げたり、歓声を上げたりして喜んでいた。

 同校の村上林太さんは「闇バイトの知識がない私たちも、楽しみながら学ぶことができた」と笑顔だった。また、小野田ゆずさんは「誰でも闇バイトに巻き込まれる危険性があることが分かった」と話した。

 今井さんは「狙われないこと。だまされないこと。巻き込まれたら、すぐに身近な人や警察に相談してほしい」と訴えた。【杉本修作】

毎日新聞

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