<eye>「ふるさと少年探険隊」に同行取材 北海道 知床
「ふるさと少年探険隊」は北海道・知床半島東側にある羅臼町で1981年に始まった。地元の小中学生が、道路もなくヒグマが高密度で生息する半島先端部で5泊6日の秘境生活を送る夏の恒例行事だ。知床半島の世界自然遺産登録から今年で20年。41回目の開催となった探険隊に同行取材した。
今回は小学4~中学3年までの36人と、町職員、消防士、漁師、他の有志らで構成するスタッフ29人の計65人が参加。7月30日午前6時ごろ、車道が途切れる相泊(あいどまり)をスタートし、9キロ先にある探険隊の拠点・モイレウシ湾に向け歩き始めた。
漁師の作業小屋「番屋」が点在する海岸線は人けはない。ヒグマの気配があると先頭を歩く熊対策係のスタッフが両手をたたいて音を鳴らしたり、茂みに爆竹を投げ入れたりしながら進む。午前8時半、最初の難所「観音岩」に到着。安全のためスリングやロープを装着し、高さ約20メートルある垂直の崖を前に、子供たちは緊張した表情に。年少者から順に登る。
小学4~5年の年少班が登り終えた頃、観音岩最上部付近でスタッフの電話に着信があった。ここだけは携帯電話が通じた。「カムチャツカ半島で地震があり、津波注意報(後に警報)が出たらしい」。探険隊の支援船や後方支援班からも連絡があり緊迫感が増す。モイレウシ湾まで約5キロ、潮位の影響を受けやすい難所もある。警報解除まで観音岩の高台での待機が告げられた。
「おうちに帰りたい」。泣き出す子もいたが、至るところに安置された観音像に手を合わせて拝む仕草を楽しむ子、虫を捕まえる子など時間がたつにつれて恐怖心は和らいでいくようだった。
観光船を営む元漁師の野田克也さん(65)は朝から客と半島沿岸をクルーズしていた。途中、事務所から津波の知らせを受けた。船仲間と無線で連絡を取り合い、観音岩で待機中だった探険隊が避難する時は船を出し合うことになった。「早い船は(午前)10時ごろにはスタンバイしていた」と集まった漁船は計7隻。救出開始の指示を沖で待った。
「自然には逆らえないものがある。僕たちが身を引くのがすごく大事」と探険隊隊長の葛西良浩さん(52)。
津波到来の可能性もあり、町は正午までに、探険隊の避難を決定した。羅臼海上保安署の巡視船など2隻が、漁船団から数キロ離れた海上で救出の一部始終を見守った。
午後0時半、漁船が待つ海岸に向け、3時間ほど前に登った崖をロープを使って下りる。モイレウシ湾からさらに10キロ以上先の知床岬を目指すチャレンジ隊で参加した中学1年、宮腰維さんは観音岩の崖を下りると「漁師の人たちもそわそわしていて、羅臼の町はどうなっているのか心配になった」。小型漁船が浅瀬に入り隊員を乗せ、大型漁船までピストン輸送し事なきを得た。
「夕日が見たい」とチャレンジ隊に挑戦した中学2年の魚津心海(ここみ)さんは「知床岬に行けなかったのは残念。でもこれも貴重な体験。これからも津波が来るとなった時は今日みたいに行動したい」と話した。葛西さんは「羅臼では地域で子供を育てる意識があり、今回も漁師の人たちが子供のために自分が行かなきゃいけないと思ってくれたのだろう」と感謝。他のスタッフも「羅臼だからこそできた共助」と口にしていたのが印象的だった。
写真・文 宮間俊樹
(すべて北海道羅臼町で撮影)
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