毎晩2時間の日本語学習、介護福祉士合格も 人手不足業界で働く25歳

2025/09/04 07:15 

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 人口減少の影響で各業界で人手不足が問題となり、三重県内でも外国人の働き手が貴重な人材として増えている。四日市市の介護施設「花びより かいぞう」で働くジュミアティ・アワラトウーリャさん(25)もその一人だ。

 「これから体を起こしますね」。介護施設で正社員として勤務するジュミアティさんは、施設の利用者に優しく声をかけながら、ベッドから車椅子への移乗介助する。「皆さん優しくて、私の名前を覚えてもらえるとうれしいし、仕事が楽しい」と笑顔で語った。

 インドネシア出身。幼い頃から日本が好きで、専門学校で介護を学んだ後、インドネシアの日本語学校に1年通い、2019年に技能実習生として来日した。介護事業の福村屋(四日市市)に就職し、認知症の人たちが暮らす現在のグループホームに勤務する。

 来日当初は漢字の読み方や「あかん」「えらい」など方言がわからず、利用者との会話に苦労したという。ただ、勉強熱心なジュミアティさんは、日本語のオンライン授業など働きながら毎晩2時間学習した。今年には日本語能力検定で最上級の「N1」と介護福祉士の国家試験に合格した。

 国家資格を得て、在留資格を「特定技能」から在留期間の更新に制限がない「介護」への切り替えを申請している。「日本の人は優しいし、これからも日本で働いていきたい。ビザの関係もあってなかなか簡単に家族を呼ぶことができない。できれば、家族も呼ぶことができたらうれしい」と語った。

 「花びより かいぞう」の吉永茂洋所長は「ジュミアティさんは必要不可欠な存在。人手不足で状況は大変。もう日本人だけでは、どうしようもできない」という。同施設ではジュミアティさんを含め3人の外国人労働者が勤務し、入浴や食事作りなどをこなす。「嫌な顔をしないし、意欲的で大変助かっている」と話した。

 現在、従業員1人に対して2、3人の利用者を介助するようにしている。ただ、今後も人手不足が続けば、体制を維持するのは難しくなるという。介護分野では1事業所で外国人労働者の受け入れ人数に上限もあり、吉永所長は「介護の仕事が減ることはないが、働く人は減り続けている。このまま日本人の労働者が足りなくなったら、外国人に頼るしかない」と口にした。

 外国人労働者はコロナ禍の影響で2020年に減少したが、21年からは右肩上がりだという。三重労働局によると、県内の外国人労働者は昨年10月末時点で3万7091人(前年同期比3398人増)、外国人労働者を雇っている事業所は4961カ所(同340カ所増)でいずれも過去最高を更新している。担当者は「人手不足の声が聞かれ、外国人労働者が求められている」と説明した。

 外国人の受け入れについて規制を求める声もあるなか、現場の状況は切実だ。担当者は「在留資格など期限が決まっていることを知らない人たちもいる。ルールを守るような周知をしないといけない」と続けた。外国人でも安心して働けるためにも、環境整備が必要になる。【渋谷雅也】

毎日新聞

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