法律書の「デジタル図書館」を提訴 出版社「著作権侵害」を主張

2025/10/15 14:02 

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 法律書を無断で電子データ化して会員に提供するサービスで著作権を侵害されたとして、法律書の出版社2社と執筆者の法学者4人が15日、「法律書デジタル図書館」を運営する東京都内の一般社団法人を相手取り、サービスの差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こした。出版社側は「企業努力にただ乗りし、収益を奪っている」と主張している。

 図書館は従来、出向いた利用者に直接、複写物を渡さなくてはならなかったが、2023年6月施行の改正著作権法で、蔵書の一部を電子データ化して提供できるようになった。ただし、営利目的でなく、著作権者の利益を不当に害さないことが要件とされる。

 訴状などによると、法律書デジタル図書館は会員制の私立図書館をうたい、25年2月にサービスを開始。会員は2万冊以上の蔵書を横断的に検索した上で、読みたい部分をPDFデータでメールで受け取れる。個人会員の年会費は約13万円で、データは1申請につき税抜き250円の事務手数料などを支払えば入手可能だという。

 出版社側は、法律書は高額で、利用者の研究者や弁護士、企業の法務担当者にとっては一部のページのみでも価値があると主張。法律書デジタル図書館には営利目的があり、著作権者の利益を不当に害するとして、改正著作権法の要件を満たしていないとしている。

 原告出版社「商事法務」の奥田博章・リーガルテック部次長は提訴後の記者会見で「専門書は著作権者と出版社が一緒になって形にした努力の結晶だ。今回のスキームを認めてしまうと、他のジャンルの専門書も同じような方法で配信する事業者が現れかねない」と訴えた。【安元久美子、三上健太郎】

毎日新聞

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