<星空と宇宙>レモン彗星が1350年ぶりの回帰 11月にかけて西空に輝く

2025/10/18 17:00 

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 また新たな彗星(すいせい)がやってきました。その名は「レモン彗星」。黄色いレモンが夜空に浮かぶ姿を想像しそうな名前ですが、実は関係がありません。2025年1月、米国のレモン山天文台が発見しました。新月の10月21日には地球に約9000万キロ(地球―太陽間の6割ほど)まで最接近します。今まさに、見ごろです。

 彗星は「汚れた雪だるま」とも称され、太陽に近づくと彗星本体の表面から放出された細かなちりや、蒸発したガスをまき散らします。「ほうき星」という和名は、尾が伸びた特徴的な姿が由来です。

 米航空宇宙局(NASA)によると、約1350年ぶりの回帰(太陽接近)とのこと。11月8日には太陽に最接近し、その距離は約8000万キロとなります。一般的には太陽に最接近した時に、彗星は最も明るく輝きます。しかし、その前に地球に近づくため、レモン彗星は明るさを保って夜空を移動していく見込みです。

 17日早朝、富士山のふもとで眺めた時には、淡い尾が少し伸びた姿が、月明かりの中でも双眼鏡ではっきりと確認できました。彗星が最も明るくなるのは10月下旬から11月上旬です。

 最初は明るくなっても4等程度と予測されていましたが、3等台まで明るくなりそうだとみられています。街明かりの中では難しいですが、空の暗い場所で月光の影響が少なければ、肉眼で見ることもできそうです。低倍率でも双眼鏡があると、よりはっきりと観察できます。

 18日には彗星はりょうけん座から、うしかい座に向かっていて、見やすい時間帯が明け方から夕方に変わってきました。日没1時間後の彗星の位置は、西北西の空、高さ18度ほどの所に見えます。24日ごろにかけて、うしかい座の1等星「アークトゥルス」より10度ほど高い位置を通るので、目印になります。

 月末にかけて高度が少し高くなり、位置も南へと移ります。28日には西の方向で高さ22度。彗星が太陽に最接近する11月8日には、西南西の高さ15度ほどに移動します。その後は高度が日ごとに下がり、見つけにくくなります。この高さは東京の緯度を元にしていますが、星空の中の彗星の位置は、全国どこで見ても一緒です。

 10月25日以降は次第に月明かりの影響が増します。11月5日は満月。8日以降は月の出が遅くなり、月光の影響が無くなりますが、彗星の高度も下がります。

 メディアでは最接近する日だけが大きく取り上げられがちですが、彗星は10月21日だけが見やすいわけではありません。

 高度や月光などの条件を考慮すると、観察に一番向くのは10月25日ごろにかけてとなりそうです。その後も月明かりに負けずに輝くことを期待したいです。夜空の暗い郊外の方が見つけやすくなりそうです。

 ちょうど1年前の今ごろ、天文ニュースは「紫金山・アトラス彗星」で持ちきりでした。肉眼でも尾を伸ばした姿を観察でき、スマートフォンでも撮影できる大彗星となりました。

 今回のレモン彗星は、そこまでは明るくならない見込みです。それでも肉眼で観察できるような明るさの彗星は、毎年のようには訪れません。この彗星の次の回帰は、少し軌道が変化して1100年以上先になると予測されています。まさに一期一会の機会です。

 彗星が見られるのは夕方の遅くない時間帯です。晴れの日にはぜひ、地域によってはクマにも十分注意して、西の空に輝くレモン彗星を探してみてはいかがでしょうか。【手塚耕一郎】

毎日新聞

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