障害のある社員への配慮 「至らなかった」経験、主要企業の4分の1

2025/11/11 11:01 

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 国内の主要企業に毎日新聞が障害のある従業員の雇用についてアンケートしたところ、回答した92社のうち4分の1にあたる23社が「合理的配慮に至らなかった事例がある」と回答した。

 2016年施行の改正障害者雇用促進法は障害のある従業員への、また24年の改正障害者差別解消法は民間事業者による障害者への合理的配慮を義務付けた。

 24年の民間企業の障害者雇用率は2・41%と過去最高となったが、当事者が求める配慮は個々のケースで異なることなどから、障害者雇用において企業が対応に苦慮している状況がうかがえた。

 ◇「疎外感」から退職する事例も

 毎日新聞は9月に126社にアンケートを配布し、11月までに92社から回答を得た。「障害のある従業員の雇用で合理的配慮に至らなかった事例はあるか」との問いに、23社が「ある」、54社が「ない」と回答。15社は「判断が難しい」などの理由で答えなかった。

 障害者雇用促進法は事業者の過重な負担にならない範囲で障害者からの申し出により障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定めている。

 合理的配慮に至らなかった事例について各企業に尋ねたところ「障害特性に対応できる環境が不十分だったため採用に至らなかった」「事業所施設のバリアフリー化は費用や時間もかかるためまだ十分に対応できているとは言えず、雇用が制限されている」などと環境整備の課題が聞かれた。

 また、「聴覚障害の社員がコミュニケーションが不十分と疎外感を感じ退職につながった」「突然退職することになった身体障害者の社員に理由を尋ねると、周囲が配慮と思っていた内容が本人が考える配慮の内容と違っていた」「上司が代わった際に配慮の引き継ぎが不十分で離職を考えるほど本人が悩んでしまった」など適切な配慮について当事者と十分に調整できなかったケースも挙げられた。

 ◇企業からは相談窓口の設置求める声

 一方、「合理的配慮を行った事例はあるか」には79社が「ある」と答えた。具体的には「業務遂行において困難が生じた際、自治体のジョブコーチ支援を実施し、コミュニケーションの円滑化を図った」「本人との対話により騒音対策としてイヤーマフ、光対策としてサングラスの着用を許可した」などの内容だった。

 求められる配慮は障害特性や個人によって変わる難しさがあり、厚生労働省は過去の事例を定期的に参考で公表している。

 企業からは「労働基準法との両立をベースとしたより具体的な事例集の作成と周知が必要」「過重な負担とならない範囲でどこまで対応すべきか判断に迷うケースがある。専門的見地から事業者が相談できる専用窓口設置を」と求める声もあった。

 アンケでは障害者のキャリアについても質問した。「管理職や役員に障害者がいるか」との問いには62社が「いる」、13社が「いない」と回答。「人事制度で障害のある従業員を考慮した取り組みを行っているか」との問いには58社が「行っている」、23社が「行っていない」と答えた。具体的な取り組みとしては「一定期間の嘱託雇用を経て正社員に登用する仕組みがある」「業務能力や勤務態度などに応じた昇給がある」などだった。【加藤昌平、田中綾乃】

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